そうめんの話

そうめん

 

これは怪談じゃないが、

話しておかなくてならない。

 

僕のオカルト道の師匠が、

急にサークルへ顔を出さなくなった。

 

師匠の同期の先輩が言うには、

大学にも来てないとのこと。

 

心配になって、

僕は師匠の家に直接行ってみた。

 

すると、

 

案の定、鍵が開いていたので

ノックして乗り込むと、

 

ゲッソリした師匠が布団に寝ている。

 

話を聞いてみると、

 

「食欲が無くて、もう1週間

そうめんしか食べてない」

 

そりゃやつれるわ、と思い、

 

僕が「何か食うもんないんですか?

死にますよ」と言って、

 

部屋を漁ったが何も出てこない。

 

「夏バテですか?」

 

と聞いたが答えない。

 

何も答えてくれないので、

もう知らんわいと、

 

僕は薄情にも家を出た。

 

僕は師匠を恐れてはいたが、

妙に彼は子供っぽいところがあり、

 

ある面、僕はナメていた。

 

その頃にはタメ口もきいたし。

 

2日後にまた行くと、

同じ格好で寝ている。

 

部屋から一歩も出ずに、

1日中ゴロゴロしているそうだ。

 

「そうめんばっかりじゃもちませんよ」

 

と僕が言うと、

 

師匠は急に「うっぷ」と胸を押えて

トイレに駆け込んだ。

 

背中をさすると、

ゲロゲロと吐き始めた。

 

それを見ながら僕は、

 

「白いそうめんしか食ってなくても、

ゲロはしっかり茶色いんだなぁ」

 

と変なことを考えていたが、

ふと気付いた。

 

そういえば・・・

 

もう一度漁ったが、

やはり何もない。

 

そうめんさえ、

この部屋には無いのだ。

 

「なに食ってるんスか先輩」

 

と詰め寄ったが答えてくれない。

 

なにかに憑かれてんじゃねーのかこの人?

と思ったが、

 

僕にはどうしようもない。

 

取りあえず無理やり病院に連れて行くと、

栄養失調で即入院になった。

 

点滴を打ってると治ったらしく、

4日後には退院してきたが、

 

あの引きこもり中に何を食べていたのか、

結局教えてくれなかった。

 

ただ、なぜかそれから

口調が急に変わった。

 

『俺。オイコラ』

 

から、大人しい

 

『僕。~だね。~だよ』

 

になり、

子供っぽさが加速した。

 

その一回生の夏、

 

僕は師匠とオカルトスポットに

行きまくったのだが、

 

おかげで頼りがいがなく、

色々ヤバイ目にあう。

 

(終)

次の話・・・「失踪

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