写真 1/2

写真

 

大学2回生の春ごろ、

 

オカルト道の師匠である先輩の家に

ふらっと遊びに行った。

 

ドアを開けると狭い部屋の真ん中で、

なにやら難しい顔をして写真を見ている。

 

「なんの写真ですか」

 

「心霊写真」

 

ちょっとひいた。

 

心霊写真がそんなに怖いわけではなかったが、

問題は量なのだ。

 

畳の床一面にアルバムがばらまかれて、

数百枚はありそうだった。

 

どこでこんなに!と問うと、

 

「業者」

 

と写真から目を離さずに言うのだ。

 

どうやら、

大阪にそういう店があるらしい。

 

お寺や神社に持ち込まれる心霊写真は、

 

もちろん御祓いをして欲しいということで

依頼されるのだが、

 

大抵は処分もして欲しいと頼まれる。

 

そこで燃やされずに横流しされたモノが、

マニアの市場へ出てくると言う。

 

信じられない世界だ。

 

何枚か手に取って見たが、

どれも強烈な写真だった。

 

モヤがかかってるだけ、

みたいなあっさりしたものはない。

 

公園で遊ぶ子どもの首がない写真。

 

海水浴場でどう見ても

水深がありそうな場所に、

 

無表情の男が膝までしか浸からずに

立っている写真。

 

家族写真の中に、

 

祭壇のようなものが脈絡もなく

写っている写真・・・

 

俺はおそるおそる師匠に聞いた。

 

「御祓い済みなんでしょうね」

 

「・・・きちんと御祓いする

坊さんやら神主やらが、

 

こんなもの闇に流すかなあ」

 

「じゃ、そういうことで」

 

出て行こうとしたが、

師匠に腕をつかまれた。

 

「イヤー!」

 

この部屋にいるだけで呪われそうだ。

 

雪山の山荘で名探偵10人と遭遇したら、

こんな気分になるだろうか。

 

観念した俺は、

部屋の隅に座った。

 

師匠は相変わらず眉間にしわを寄せて

写真を眺めている。

 

ふと目の前の写真の束の中に、

変な写真を見つけて手に取った。

 

変というか、

変じゃないので変なのだ。

 

普通の風景写真だった。

 

「師匠、これは?」

 

と見せると、

 

「ああ、

 

これはこの木の根元に女の顔が・・・

あれ?ないね。消えてるね。

 

まあ、そんなこともあるよ」

 

って言われても。

 

怖すぎるだろ!

 

俺は座りしょんべんをしそうになった。

 

そして、

部屋の隅でじっとすることし暫し。

 

ふいに師匠が言う。

 

「昔は真ん中で写真を撮られると、

 

魂が抜けるだとか、

寿命が縮むだとか言われたんだけど、

 

これはなぜかわかる?」

 

「真ん中で写る人は先生だとか上司だとか、

年配の人が多いから早く死に易いですよね。

 

昔の写真を見ながら、

 

ああ、この人も死んだ、この人も死んだ、

なんて話してると、

 

自然にそんな噂が立ったんでしょうね」

 

「じゃあ、こんな写真はどう思う」

 

師匠はそう言うと、

白黒の古い写真を出した。

 

どこかの庭先で着物を着た男性が3人、

並んで立っている写真だ。

 

その真ん中の初老の男性の頭上のあたりに

靄のようなものが掛かり、

 

それが顔のように見えた。

 

「これを見たら魂が抜けたと思うよね」

 

たしかに。

 

本人が見たら生きた心地が

しなかっただろう。

 

師匠は、「魂消た?(たまげた)」とか、

そういうくだらないことを言いながら、

 

写真を束の中に戻す。

 

「魂が取られるとか抜けるとかいう

物騒なことを言ってるのに、

 

即死するわけじゃなくて、

 

せいぜい寿命が縮むっていうのも

変な話だよね」

 

なるほど、

そんな風に考えたことはなかった。

 

「昔の人は、

魂には量があって、

 

その一部が失われると

考えていたんだろうか」

 

そういうことになりそうだ。

 

「じゃあ、

 

魂そのものの霊体が写真に撮られたら

どういうことになる?」

 

「それは心霊写真のことですか?

身を切られるようにつらいでしょうね」

 

と、くだらない冗談で返したが、

 

よく考えると、

 

「でもそれは、

 

所詮、昔の人の思い込みが

土台になってるから、

 

一般化できませんよ」

 

俺はしてやったという顔をした。

 

すると、

師匠はこともなげに言う。

 

「その思い込みをしてる、

昔の人の霊だったら?」

 

うーむ。

 

「どういうことになるんでしょうか」

 

「取り返しにくるんじゃない?」

 

師匠は囁く様な声で言うのだ。

 

やめて欲しい。

 

そんな風に俺をいびりながらも、

 

師匠はまた難しい顔をして

写真を睨みつけている。

 

部屋に入った時から同じ写真ばかり

繰り返し見ていることに気づいた俺は、

 

地雷と知りつつ「なんですか」と言った。

 

(続く)写真 2/2

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