超能力 1/2

箱

 

大学時代、

 

霊感の異常に強い

サークルの先輩に会ってから、

 

やたら霊体験をするようになった俺は、

 

オカルトにどっぷり浸かった

学生生活を送っていた。

 

俺は一時期、

超能力に興味を持ち、

 

ESPカードなどを使って、

 

半ば冗談でESP能力開発に

取り組んだことがあった。

 

ESPカードとは(wikipedia)

ESP(超感覚的知覚)実験用のカードの一種のことである。

 

師匠と仰ぐその先輩はと言えば、

 

畑違いのせいか超能力なんていう

ハナシは嫌いなようだった。

 

しかし、

信じてないというわけではない。

 

こんなエピソードがある。

 

テレビを見ていると、

 

日露超能力対決!などという

企画の特番をやっていた。

 

その中で、

 

ロシア人の少女が目隠しをしたまま、

箱に密封された紙に書かれている内容を当てる、

 

という実験があった。

 

ようするに透視するというのだ。

 

少女が目隠しをしたあとに

芸能人のゲストが書いたもので、

 

事前に知りようがないはずなのに、

少女は見事にネズミの絵を当てたのだった。

 

しかし、

テレビを見ていた師匠が言う。

 

「こんなの透視じゃない」

 

目隠しがいかに厳重にされたか

見ていたはずなのに、

 

そんなことを言い出したので、

 

「どういうことです?」

 

と問うと、

真面目くさった顔で、

 

「こんなのはテレパスなら簡単だ」。

 

意表をつかれた。

 

ようするに、

 

精神感応(テレパシー)能力がある人間なら、

その紙に書いたゲストの思考を読めば、

 

こんな芸当は朝飯前だというのである。

 

どんなに厳重に目隠しをしようと、

箱に隠そうと、

 

それを用意した人間がいる限り、

中身はわかる。

 

師匠は、

 

「テレビで出てくるような透視能力者は

すべてインチキで、

 

ちょっとテレパシー能力があるだけの

凡人だ」

 

と言った。

 

『テレパシー能力のある凡人』

 

という表現が面白くて笑ってしまった。

 

師匠はムッとしたが、

俺が笑い続けているのは他に理由があった。

 

ロシア人の少女の傍に立つ、

通訳の男をよく知っていたからだ。

 

インチキ超能力芸で何度も業界から干された、

その筋では有名な山師だ。

 

俺は今回の透視実験のタネも知っている。

 

時々、「続けて大丈夫か」というような

ことを言いながら少女の身体に触る。

 

その触り方で、

絵の情報を暗号化して伝えているのだ。

 

以前、雑誌で読んだことのある、

彼のいつもの手口だった。

 

松尾何某がそこにいれば、

 

『通訳にも目隠しさせろ』

 

などと、

意地悪なことを言い出すところである。

 

俺はあえて、

 

この少女をテレパスだと信じている師匠に、

この特番の裏を教えなかった。

 

なんだかかわいらしい気がしたから。

 

そんなことがあった数日後、

師匠が俺の下宿を訪ねてきて、

 

「今日はやりかえしに来た」

 

と言う。

 

あの番組のあと、

 

雑誌やテレビでインチキが暴露されて

ちょっと話題になったから、

 

師匠の耳にも入ったらしい。

 

俺が知っていてバカにしていたことも・・・

 

俺は嫌な予感がしたが、

部屋に上げないわけにはいかない。

 

師匠はカバンから、

厚紙で出来た小さな箱を二つ出し、

 

テーブルの上に置いた。

 

「こちらを箱A、こっちを箱Bとする」

 

同じような箱に、

マジックでそう書いてある。

 

なにが始まるのかドキドキした。

 

「Aの箱には千円、

Bの箱には1万円が入っている。

 

この箱を君にあげよう」

 

ただし、

と師匠は続けた。

 

「お金を入れたのは実は予知能力者で、

 

君がABどちらか片方を選ぶと予知していたら、

正しく千円と1万円を入れている。

 

しかし、

 

もし君が両方の箱を選ぶような

欲張りだと予知していたら、

 

Bの箱の1万円は入れていない」

 

さあ、どう選ぶ?

 

そう言って選択肢をあげた。

 

『1、箱Aのみ』

『2、箱Bのみ』

『3、箱AB両方』

 

「・・・おっと、それから、」

 

『4、どちらも選ばない』

 

どういうゲームかよく分からないが、

頭を整理する。

 

ようするに、

 

Bだけを選んだらちゃんと

1万円入ってるんだから、

 

2の『箱Bのみ』が一番儲かるんじゃ

ないだろうか。

 

師匠は嫌らしい顔で、

 

「ほんとにそれでいいのぉ?」

 

と言った。

 

ちょっと待て、

冷静に考えろ。

 

「その予知能力者は、

本物という設定なんですか」

 

肝心なところだ。

 

しかし師匠は、

 

「質問は不可」

 

と言うだけだった。

 

目の前の箱を見ていると、

 

『そこにあるんだからいくら入ってようが

両方もらっといたらいいじゃん?』

 

と、俺の中の悪魔が囁く。

 

『待って待って、

 

予知能力が本物なら、

両方選べばBはカラ。

 

Aの千円しか手に入らないぞ?』

 

と、俺の中の天使が囁く。

 

『予知能力が偽者ならどうよ?

 

そう予知して

Bにお金を入れなかったのに、

 

実際はBだけを選んでしまったら

儲けは0円だぞ』

 

と、悪魔。

 

そうだ。

 

大体、予知能力というのが

あやふやだ。

 

目の前にあるのに、

 

その箱の中身がまだ定まっていないというのが、

実感がわかない。

 

お金を入れる、という行為は、

すでに終わった過去なのだから、

 

今から俺がどうしようが、

箱の中身を変えることは出来ない、

 

という気もする。

 

じゃあ、

 

3の箱AB両方というのが

最善の選択なんだろうか。

 

「さん・・・」

 

と言いかけて、

思いとどまった。

 

(続く)超能力 2/2

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One Response to “超能力 1/2”

  1. 受寿物流 より:

    ちょっと不審なんだよね

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