目を閉じても見える不思議な遊び
俺と姉ちゃんの変わった能力体験の話。
「面白い遊びを聞いてきたよ♪」と、タオル片手に姉ちゃんが言ってきた。
曰く、『目を閉じても見える』というような遊びだという。
生きているものは見えないはずが・・・
内容は、瞼を閉じてタオルで目隠しをすると、普通なら何も見えない。
また、目を開けていてもタオルで目隠しすると、やっぱり何も見えない。
しかし姉ちゃんが、「目を閉じたまま目を開けるんだよ」と言うので、俺はよく分からないままに目を閉じて、目隠しをして、目を開ける。
そしたら見えたんだ。
景色というのか、部屋の中の様子が。
残像じゃないの?記憶で再現しているだけじゃないの?と言いたくなるだろうが、本当にちゃんと見える。
それに、歩けるし、飛べるし、踊れる。
これはスゲェ!となったが、おかしなことに何処を見回しても姉ちゃんの姿がない。
すると姉ちゃんが、「生きているものは見えないんだって」と言う。
でも手探りで探すと、姉ちゃんは確かにすぐ近くにいた。
そんな状態のまま、声だけが聞こえる姉ちゃんとトランプをしたりして遊んだ。
最終的には外に出て遊んでいたが、近所の人に見つかり、「なんかおかしなことしとるけど危ないんじゃ?」と親にチクられて説教をされ、この遊びは禁止になった。
・・・が、隠れて時々やっていた。
そのせいか、寝る時はタオルで目隠しをしないと寝られなくなってしまった・・・。
最近、久し振りに姉ちゃんの家に泊まることがあり、寝る時にタオルを借りたらこの話になった。
そして、「今でも出来る?俺はもう出来んけど面白かったなあ」と言ったら、姉ちゃんが思いもよらぬことを言い出した。
「ずっと黙っていたんだけど、あれの時、たまにあんたの後ろにおっさんがおったんよ」と。
何それ?!怖えーよ!その時に言えよ!と思ったが、ふと「生きているものは見えないんじゃねぇのか?」と返すと、「だから黙ってたんよ~」と姉ちゃん。
こいつはアホか・・・と俺は思った。
あとがき
この遊びのコツは、ギュッと目を閉じてゆっくりと力を抜いていくこと。
薄皮を一枚剥くような、そんな感じだ。
目隠しはあった方が最初はやりやすいと思う。
俺は今でも調子が良いとたまに見える。
だが、あまり見たくない気もする。
うっかりおっさんが見えたりしそうで・・・。
(終)