超能力 2/2

箱

 

これはゲームなのだ。

 

所詮、

師匠が用意したものだ。

 

危うく本気になるところだった。

 

たぶん、3を選ばせておいて、

箱Bは空っぽ。

 

「ホラ、欲をかくから千円しか

手に入らないんだ」

 

と笑う。

 

そういう趣向なのだろう。

 

なんだか腹が立ってきた。

 

2のBだけを選んでおいて、

 

『片方しか選んでないのに、

1万円入ってないぞ』

 

とゴネることも考えた。

 

しかし、3の『両方』を選んでおけば、

最低でも千円は手に入るのだから、

 

次の仕送りまでこれで○千円になって・・・と、

生活臭あふれる思考へと進んでいった。

 

すると師匠が「困ってるねえ」と、

嬉しそうに口を出してきた。

 

「そこで、

一つヒントをあげよう。

 

君がもし、

 

透視能力もしくはテレパシー能力の

持ち主だったとしたらどうする?」

 

きた。

 

また変な条件が出てきた。

 

予知能力という仮定の上に、

さらに別の仮定を重ねるのだから、

 

ややこしい話になりそうだった。

 

そんな顔をしてると、

師匠は「簡単簡単」と笑うのだった。

 

「透視ってのは、

ようするに中身を覗くことだろう?

 

だったら再現するのは簡単。

 

箱の横っ腹に穴を開けて見れば、

立派な透視能力者だ」

 

「ちょ、そんなズルありですか」

 

と言ったが、

 

「透視能力ってそういうものだから」

 

そっちがOKなら全然構わない。

 

「テレパシーの方ならもっと簡単。

入れた本人に聞けばいい。

 

頭の中を覗かれた設定で」

 

なんだかゲームでもなんでも

なくなってきた気がする。

 

「で、僕は超能力者になって

いいんですか?」

 

「いいよぉ。

 

ただし、

透視能力かテレパシーかの2択。

 

と言いたいところだけど、

 

テレパシーの方は入れた本人が

ここにいないから、

 

遠慮してもらおうかな」

 

本人がいない?

 

嫌な予感がした。

 

「もしかして、

彼女が絡んでますか?」

 

と問うと頷き、

 

「僕も中身は知らない」

 

と言った。

 

俺は青くなった。

 

師匠の彼女は、

なんと言ったらいいのか、

 

異常に勘が鋭いというのか、

 

予知まがいのことが出来る、

あまり関わりたくない人だった。

 

「本物じゃないですか!」

 

俺は目の前の箱から、

思わず身を引いた。

 

ただのゲームじゃなくなってきた。

 

仮に、

もし仮に、

 

万が一、

百万が一、

 

師匠の彼女の力が

たまたまのレベルを超えて、

 

ひょっとして、もしかして、

本物の予知能力だった場合、

 

これってマジ・・・?

 

俺は今までに何度か、

 

その人にテストのヤマで

助けてもらったことがある。

 

あまりに当たるので、

気味が悪くて最近は喋ってもいない。

 

「さあ、透視能力を使う?」

 

師匠はカッターを持って、

箱Bにあてがった。

 

「ちょっと待ってください」

 

話が違ってくる。

 

というか本気度が違ってくる。

 

予知能力が本物だとした場合、

両方の箱を選ぶという行為で、

 

Bの箱の中身が遡って消滅したり

現れたりするのだろうか?

 

それとも、

 

俺がこう考えていることも

全て込みの予知がなされていて、

 

俺がどう選ぶかということも

完全に定まっているのだろうか。

 

「牛がどの草を食べるかというのは

完全には予測出来ない」

 

という、

 

不確定性原理とか言われてる、

 

ややこしい物理学の例題が

頭を過ぎったが、

 

よく理解してないのが悔やまれる。

 

俺が苦悩しながら指差そうと

しているその姿を、

 

過去から覗かれているのだろうか?

 

そして俺の意思決定と同時に、

箱にお金を入れるという、

 

不確定な過去が定まるのだろうか?

 

その『同時』ってなんだ?

 

考えれば考えるほど恐ろしくなってくる。

 

人間が触れていい領域のような気がしない。

 

渦中の箱Bは、

何事もなくそこにあるだけなのに。

 

そして、

 

その箱を選ぶ前に中を覗いてしまおう

というのだから、

 

なんだか訳がわからなくなってくる。

 

俺は膝が笑い始め、

脂汗がにじみ、

 

捻り出すように一つの答えを出した。

 

「4、どちらも選ばない、

でお願いします」

 

師匠はニヤリとして、

カッターを引っ込めた。

 

「前提が一つ足りないことに気がついた?

 

片方を選ぶ場合はそれぞれにお金を入れ、

両方を選ぶ場合はAにしか入れない。

 

じゃあ、どちらも選ばないと

予知していた場合は?

 

決めてなかったから、

 

僕もこの中がどうなっているのか

分からないんだなぁ」

 

師匠はそう言いながら、

無造作に二つの箱をカバンに戻した。

 

俺はこの人には勝てないと思い知った。

 

(終)

次の話・・・「

原作者ウニさんのページ(pixiv)

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