四隅 1/4

手

 

大学1回生の初秋。

 

オカルト系のネット仲間と、

『合宿』と銘打ってオフ会を開いた。

 

山間のキャンプ地で、

 

『出る』という噂のロッジに

泊まることにしたのである。

 

オフ会は普段からよくあったのだが、

泊まりとなると女性が多いこともあり、

 

あまり変なメンバーを入れたくなかったので、

ごく内輪の中心メンバーのみでの合宿となった。

 

参加者はリーダー格のCoCoさん、

京介さん、みかっちさんの女性陣に、

 

俺を含めた計4人。

 

言ってしまえば、

 

荷物持ち&力仕事専用の

俺なわけだが、

 

呼ばれたことは素直に嬉しかった。

 

日程は1泊2日。

 

レンタカーを借りて乗り込んだのだが、

 

シーズンを外したおかげで

キャンプ地はわりに空いていて、

 

うまい空気吸い放題、

ノラ猫なで放題、

 

やりたい放題だったはずだが、

 

みかっちさんが「かくれんぼをしよう」

と言い出して、

 

始めたはいいものの、

 

CoCoさんが全然見つからず、

そのまま日が暮れた。

 

夕飯時になったので、

 

放っておいてカレーを作り始めたら、

どこからともなく出てきたのだが、

 

俺はますますCoCoさんがわからなくなった。

 

ちなみに、俺以外は全員

20代のはずだったが・・・

 

その夜のことである。

 

『出る』と噂のロッジも、

酒が入るとただの宴の会場となった。

 

カレーを食べ終わったあたりから

急に天気が崩れ、

 

思いもかけず強い雨に

閉じ込められてしまい、

 

夜のロッジは小さな照明が揺れる中、

 

ゴーゴーという不気味な風雨の音に

包まれているという、

 

素晴らしいオカルト的環境で

あったにも関わらず、

 

酒の魔力はそれを上回っていた。

 

散々、芸をやらされ疲れ果てた俺が

壁際にへたり込んだ時、

 

前触れもなく照明が消えた。

 

やたらゲラゲラ笑っていた

みかっちさんも口を閉じ、

 

一瞬の沈黙がロッジに降りた。

 

「停電だぁ」

 

と誰かが呟いてまた黙る。

 

屋根を叩く雨と風の音が大きくなった。

 

照明の消えた室内は真っ暗になり、

ヘタレの俺は急に怖くなった。

 

「これは、アレ、

やるしかないだろう」

 

と京介さんの声が聞こえた。

 

「アレって、なんですか」

 

「大学の山岳部の4人が遭難して、

山小屋で一晩を過ごす話。かな」

 

CoCoさんが答えた。

 

暗闇の中、

体を温め眠気をさますために、

 

4人の学生が部屋の四隅に

それぞれ立ち、

 

時計回りに最初の一人が

壁際を歩き始める。

 

次の隅の人に触ると、

 

触られた人が次の隅へ歩いていって、

そこの人に触る。

 

これを一晩中繰り返して、

 

山小屋の中をぐるぐる歩き続けた

というのだが、

 

実は4人目が隅へ進むと、

そこには誰もいないはずなので、

 

そこで止まってしまうはずなのだ。

 

いるはずのない5人目が、

そこにいない限り・・・

 

という話をCoCoさんは淡々と語った。

 

どこかで聞いたことがある。

 

子供だましのような話だ。

 

そんなものノリでやっても

絶対に何も起きない。

 

しらけるだけだ。

 

そう思っていると、

京介さんが、

 

「ルールを二つ付け加えるんだ」

 

と言い出した。

 

1、

スタート走者は、

時計回り反時計回りどちらでも選べる。

 

2、

誰もいない隅に来た人間が、

次のスタート走者になる。

 

次のスタート走者って、

 

それだと5人目とかいう問題じゃなく

普通に終わらないだろ。

 

そう思ったのだが、

 

なんだか面白そうなので

やりますと答えた。

 

「じゃあ、これ。

 

誰がスタートかわかんない方が

面白いでしょ。

 

当たり引いた人がスタートね」

 

CoCoさんに渡された

レモン型のガムを持って、

 

俺は壁を這うように

部屋の隅へ向かった。

 

「みんなカドに着いた?

じゃあガムをおもっきし噛む」

 

部屋の対角線あたりから

CoCoさんの声が聞こえ、

 

言われた通りにすると、

ほのかな酸味が口に広がる。

 

ハズレだった。

 

アタリは吐きたくなるくらい

酸っぱいはずだ。

 

京介さんがどこの隅へ向かったか

気配で感じていた俺は、

 

全員の位置を把握できていた。

 

—————————-

CoCo    京介

みかっち   俺

—————————-

 

こんな感じのはずだ。

 

誰がスタート者か、

 

そしてどっちから来るのかわからない

ところがゾクゾクする。

 

つまり、

 

自分が『誰もいないはずの隅』に

向かっていても、

 

それがわからないのだ。

 

角にもたれかかるように立っていると、

バタバタという風の音を体で感じる。

 

いつ来るかいつ来るかと身構えていると、

いきなり右肩を掴まれた。

 

右から来たということは京介さんだ。

 

心臓をバクバク言わせながらも

声一つ上げずに、

 

俺は次の隅へと壁伝いに進んだ。

 

時計回りということになる。

 

自然と小さな歩幅で歩いたが、

暗闇の中では距離感がはっきりせず、

 

妙に次の隅が遠い気がした。

 

ちょっと怖くなってきた時に、

ようやく誰かの肩と思しきものに手が触れた。

 

みかっちさんのはずだ。

 

一瞬、ビクっとしたあと、

人の気配が遠ざかっていく。

 

俺はその隅に立ち止まると、

また角にもたれか掛かった。

 

壁はほんのりと暖かい。

 

そうだろう。

 

誰だってこんな何も見えない中で、

なんにも触らずには立っていられない。

 

(続く)四隅 2/4

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