四隅 2/4

手

 

風の音を聞いていると、

またいきなり右肩を強く掴まれた。

 

京介さんだ。

 

わざとやっているとしか思えない。

 

俺は闇の向こうの人物を睨みながら、

また時計回りに静々と進む。

 

さっきのリプレイのように誰かの肩に触れ、

そして誰かは去っていった。

 

その角で待つ俺は、

今度はビビらないぞと踏ん張っていたが、

 

やはり右から来た誰かに右肩を掴まれ、

ビクリとするのだった。

 

そして、

 

『俺が次のスタート走者になったら

方向を変えてやる』

 

と密かに誓いながら進むこと暫し。

 

誰かの肩ではなく、

垂直に立つ壁に手が触れた。

 

一瞬、

声を上げそうになった。

 

ポケットだった。

 

誰もいない隅を、

 

なぜかその時の俺は

頭の中でそう呼んだ。

 

たぶん、エア・ポケットからの

連想だと思う。

 

ポケットに着いた俺は、

念願の次のスタート権を得たわけだ。

 

今4人は四隅のそれぞれに

佇んでいることになる。

 

俺は当然のように、

反時計回りに進み始めた。

 

ようやく京介さんを触れる!

 

いや、誤解しないで欲しい。

 

なにも女性としての京介さんを

触れる喜びに浸っているのではない。

 

ビビらされた相手へのリベンジの機会に

燃えているだけだ。

 

ただ、この闇夜のこと、

 

変なところを掴んでしまう危険性は

確かにある。

 

だがそれは仕方のない

事故ではないだろうか。

 

俺は出来る限り足音を殺して

右方向へ歩いた。

 

そして、

すでに把握した距離感で、

 

ここしかないという位置に

左手を捻り込んだ。

 

次の瞬間、

異常な硬さが指先を襲った。

 

指をさすりながらゾクッとする。

 

壁?

 

ということはポケット?

 

そんな。

 

俺からスタートしたのに・・・

 

呆然とする俺の左肩を、

何者かが強く掴んだ。

 

京介さんだ。

 

俺は当然、

 

壁に接している人影を想像して

左手を出したのに。

 

なんて人だ。

 

暗闇の中、壁に寄り添わずに

立っていたなんて。

 

あるいは罠だったか。

 

人の気配が壁伝いに去っていく。

 

悔しさが込み上げて、

 

残された俺は次はどういくべきか

真剣に思案した。

 

そしてしばらくして、

また右肩を掴まれた時、

 

恥ずかしながら「ウヒ」という声が出た。

 

くそ!京介さんだ。

 

また誰か逆回転にしやがったな。

 

今度こそ、悲しい事故を

起こすつもりだったのに。

 

頭の中で毒づきながら、

時計回りに次の隅へ向かう。

 

そしてみかっちさん(たぶん)には、

遠慮がちに触った。

 

次の回転でも右からだった。

 

その次も。

 

その次も。

 

俺はいつまで経っても京介さんを触れる

反時計回りにならないことにイライラしながら、

 

早くポケット来い、ポケット来い、

と念じていた。

 

次ポケットが来たら、

当然反時計回りにスタートだ。

 

俺はそれだけを考えながら回り続けた。

 

何回転しただろうか、

 

闇の中で気配だけが蠢く

不思議なゲームが、

 

急に終わりを告げた。

 

「キャー!」

 

という悲鳴に背筋が凍る。

 

みかっちさんの声だ。

 

ドタバタという音がして、

懐中電灯の明かりが点いた。

 

京介さんが天井に向けて懐中電灯を置くと、

部屋は一気に明るくなった。

 

みかっちさんは部屋の隅にうずくまって、

頭を抱えている。

 

CoCoさんが「どうしたの?」

と近寄っていくと、

 

「だって、おかしいじゃない!

どうして誰もいないトコが来ないのよ!」

 

それは俺も思う。

 

ポケットが来さえすれば京介さんを・・・

 

待て、なにかおかしい。

 

アルコールで回転の遅くなっている

頭を叩く。

 

回転が止まらないのは変じゃない。

 

5人目がいなくても、

 

ポケットに入った人が勝手に

再スタートするからだ。

 

だから、

 

ぐるぐるといつまでも部屋を回り

続けることに違和感はないが・・・

 

えーと、

 

最初の1人目がスタートして

次の人に触り、

 

4人目がポケットに入る。

 

これを繰り返してるだけだよな。

 

えーと、だから・・・

どうなるんだ?

 

こんがらがってきた。

 

「もう寝ようか」

 

というCoCoさんの一言で、

とりあえずこのゲームはお流れになった。

 

京介さんは俺に向かって、

 

「残念だったな」

 

と言い放ち、

人差し指を左右に振る。

 

みかっちさんもあっさりと復活して、

 

「まあいいか」

 

なんて言っている。

 

さすがオカルトフリークの集まり。

 

この程度のことは気にしないのか。

 

むしろフリークだからこそ気にしろよ。

 

俺は気になってなかなか眠れなかった。

 

(続く)四隅 3/4

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