山中でソロキャンプの夜に見た不可解なもの
これは、私が山で遭遇した不可解な体験談です。
今より数年前の学生の頃、毎年恒例にしていた山中でのソロキャンプをした時の事。
食事も終わり、焚き火を見つめながらぼんやりしていました。
そうして20分程が過ぎた頃でした。
そろそろ寝ようかと思って何気なく周囲を見渡すと、『ソレ』は斜め後方の林にいました。
ソレの目的は何だったのか
距離にして、私のいる場所から20メートル位でしょうか。
木立の間に何やら青白い塊が見えました。
何だろう?と思い、凝視すること数秒。
思わず私が呟いた言葉は、「なんで顔だけ?」。
真っ暗な林から、男の顔だけがこちらをじっと見つめていました。
私からの距離は先述しましたが、その顔がある高さが尋常ではありませんでした。
地面より確実に10メートルは上に、その顔だけがぽつりと浮かんでいたのです。
通常、こういう時は慌てるとか、思わず叫んでしまうとかあるのでしょうが、不思議と私は冷静だったのを憶えています。
単に疲れていただけかもしれませんが。
それに、恐怖よりも疑問が優先していたかと思います。
見つめ合って1~2分が過ぎた頃、その顔は突然に消えてしまいました。
「何だったんだ、アレは?」
そう思いながら、やはり冷静なまま焚き火に視線を戻したのですが、先程まで林の中にいたはずのその顔が、今度は焚き火を挟んだ向かいに現れていました。
歳は40位でしょうか。
ソレは無表情な顔でした。
焚き火に視線を戻した瞬間から、もうそこにその顔がいたのです。
さすがにそれには驚きました。
しかし、そこでも驚きはしたものの、やはり口を突いて出た言葉は自分でも思いもしない言葉でした。
「なんだよ、お前」
思わず口走った言葉がこれでした。
今から考えると何を言っているのだと思いますが、その時はそれしか思い浮かびませんでした。
ただ、これが逆に功を奏したのかどうか、その顔はすぐに消えてしまいました。
きっとその顔は何かを訴えたくて出てきたのでしょうが、訴える相手を間違ったと思って消えたのかもしれません。
(終)