赤子火鉢

 

家は昔質屋だったと言っても、

じいちゃんが17歳の頃までだから、

 

私は話でしか知らないのだけど、

結構面白い話を聞けた。

 

喜一じいちゃんが学校から帰ると、

店にうす汚い火鉢が置いてあった。

 

(客が売りに置いて行ったのかな?)

 

マジマジ見ていると、

 

「そいつは価値のある物なんだ、

さわんじゃねーぞ」

 

おやじが奥から出て来た。

 

「えっ!?コレがぁ?」

 

と眉をひそめると、

 

おやじは「イワク付きなんだよ」

と得意気に言うと、

 

喜一は慌てて火鉢から離れた。

 

イワク付きの物は

ウチは確かに多いが、

 

一体誰がそんな物を買うのか

と聞くと、

 

「世の中、変わった物を欲しがる

悪趣味金持ちがいっぺぇいるんだよ。

 

そういった顧客は大事にしねぇとな・・・」

 

と笑っていた。

 

イワクと言うのは、

こんな話だった。

 

早くに事故で夫や家族を亡くした老婆は、

息子を異常に溺愛していた。

 

そんな家へ嫁が入り、

嫁姑戦争が始まった。

 

息子も頭を抱えていたが、

1年もすると姑が病で倒れ、

 

また1年後には嫁の看病も空しく、

亡くなってしまった。

 

悲しみに暮れた息子は、

母を溺愛していたが為に奇行に走り、

 

妻に3食毎日、

母のお骨を盛ったのだ。

 

息子は、

 

お骨を食べた人が妊娠すると

お骨の主が宿る、

 

との言い伝えを信じていた。

 

何も知らない妻は、

子に恵まれ喜び、

 

元気な女の子を産んだ。

 

息子と嫁は大事に育てたが、

奇病にかかり、

 

日に日に赤子は

痩せて萎れていった。

 

嫁の看病も空しく、

赤子は1年で、

 

まるで小さな老婆の様な

姿になった。

 

ある日突然、赤子は、

 

「この女があたしを殺したんだよ」

 

と声を上げた。

 

嫁は大声で叫び、

 

人殺しと罵る我が子を

火鉢へ突っ込んだ。

 

ところが、

 

赤子は嫁の袖をしっかりと

掴んで離さず、

 

嫁にまで火が回って来たのだ。

 

嫁は助けてと叫んだが、

 

嫁を信じれなかった夫は、

家から走り去ってしまった。

 

気がつけば、

全てが燃えてしまった後。

 

残ったのはこの火鉢だけだった・・・。

 

毋が大事にしていた火鉢なので

形見にと思ったのですが、

 

毎夜毎夜、

 

火鉢からあの赤子がひょっこりと

顔を出すんです。

 

私の名を呼びながら・・・

と男は言った。

 

寺ではなくウチへ持って来たのは、

火事の後で少しでも金が要るのだろう。

 

足下を見ておやじは安値で買った。

 

「でもそんな呪われた火鉢なんか売って、

客が呪われちゃったらどーすんだよ」

 

と喜一が聞くと、

 

「俺だってプロだ。

何か憑いてりゃ祓って売るさ。

 

客が死んじまったら

食ってけねぇからな!

 

それに、この火鉢は

呪われてなんかいねーよ。

 

見たところタダの火鉢だ。

 

化けて出て来るなんて、

男の後悔と罪悪感で紡いだ幻だろうよ。

 

呪われてるとすりゃぁ・・・」

 

それから数日後の新聞に、

 

『奇声を上げ火事の中へ

男が飛込み死亡』

 

という記事が載った・・・。

 

おやじはパラパラと店の帳簿

(売買いした客の名前と住所を記した物)

を見るとニヤっと笑い、

 

「店番頼む」

 

と言うと、

新聞と火鉢を片手に、

 

上等な下駄に履き替え

出かけて行った。

 

きっと今日はごちそうだ。

 

喜一が初めて、

複雑な気持ちを味わった話。

 

(終)

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