見せ物小屋

 

家は昔質屋だったと言っても、

じいちゃんが17歳の頃までだから、

 

私は話でしか知らないのだけど、

結構面白い話を聞けた。

 

「よう喜一、

でっかくなりやがって」

 

店にデカイおじさんがいた。

 

外知朗おじさんだ。

 

おじさんは、

おやじの悪趣味な友人の一人だ。

 

「俺の名前はトチロウ。

 

外を歩き、

沢山の事を知り、

 

そして教える者。

 

外知朗だ!」

 

おじさんの口癖でこじつけだ。

 

(昔は牛年の次男に『外』という

字をつける風習があった。

 

理由は、牛はどっしりして

中々小屋から出ようとしない様子から、

 

早く養子に行けと言う意味らしい)

 

おじさんは、

 

沢山の学校を行ったり来たり

している学者らしい。

 

行った先で変わった物を見つけたり、

 

変な宗教に首を突っ込んだりする

変人だったが、

 

田舎育ちの喜一には、

 

この人の話は夢の様な

外の世界だった。

 

その日、『見せ物小屋』の

話をしてくれた。

 

喜一の町にも、

 

縁日になればよくやって来た、

小さなサーカス&マジックだ。

 

たまたま行った村が、

ちょうど縁日だった。

 

懐かしく思ったトチロウは神社に入り、

人混みの中でマジックショーを見ていた。

 

ところが、

 

そのマジックショーには

タネが無かった。

 

どう考えても物理的にあり得ない事が、

目の前で起っていたのだ。

 

空は飛ぶは、

小さな箱から5人6人と現れたり。

 

「周りの田舎者ならとにかく、

俺の目は誤魔化せねぇぜ!」

 

と粋がったトチロウは、

 

自分のスケジュールをずらしてまで、

そこの団員達を見張ったそうだ。

 

15人程の団員達は、

 

縁日が終わると小さな小屋へと

入って行った。

 

周りにはもう人は居なくなっていた。

 

着替えでもしているのか?

と思い待っていると、

 

出て来たのは団長らしき

男一人だった。

 

??

 

不思議に思い、

小屋を覗くが誰も居ない・・・。

 

その間に団長を見失ってしまった。

 

「くそぅ。

 

確か、次の公演は隣の県

と言っていたな!!」

 

トチロウは汽車の時間を調べ、

 

次の日に汽車の中で

男を見つける事に成功した。

 

男の向かいの席に座り、

眠ったフリをすると、

 

暫くして男も眠りだした・・・。

 

しめた!と思い、

男の小さな荷物を調べた。

 

中から小箱が出て来て、

蓋を開けると、

 

葉巻きのような筒が

何本も入っていた。

 

一本抜き取ろうかと思った時に、

駅に止まる合図の汽笛が鳴った。

 

まずい!!

 

男が起きると思い、

慌てて荷物を戻し、

 

また寝たフリをした。

 

男が起きると同時に、

 

トチロウも今起きたかの様な

芝居をした。

 

男が立ち、

汽車を降りようとする。

 

トチロウも立とうとしたが、

何故か腰が上がらない!

 

声も出なかった。

 

俗に言う、

金縛りに遭った。

 

男は立ち去る瞬間、

 

「次、後を追えば殺すぞ」

 

と言い去った。

 

トチロウの金縛りは次の駅まで続き、

結局何も分からなかったそうだ。

 

横で話を聞いていたおやじが、

ぽつりと「狐だなぁ」と言った。

 

「一本盗ってくりゃ、その管狐、

高く買ってやったのによぅ」

 

と笑ったが、

 

「おりゃぁ金が欲しいんじゃねーんだよ!

真実が知りてぇんだ!!」

 

と怒るおじさんに、

おやじは、

 

「だから狐だって」

 

とラチの開かない会話が続いた。

 

(終)

 

追伸

トチロウおじさんは、

 

じいちゃんの少年時代の話に

よく出て来る人なんです。

 

宗教壊滅とか・・・謎な人で、

職業もよく分りません。

 

学者、教授、政治家、旅人、紙芝居屋、

何でもやっていたそうです。

 

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