おじいちゃんの愛の深さ
ある日、おじいちゃんに
痴呆の症状が現れた。
数十年も連れ添った、おばあちゃんが
亡くなった直後だった。
今まで、典型的な明治男である、
厳格なおじいちゃんのムスッとした
顔しか見たことが無い私。
満面の笑みで饅頭を頬張る
おじいちゃんは、
まるで別人のようでした。
「困ったもんね・・・まるで子供だわ」
母が苦笑して涙をこぼしながら、
おじいちゃんを見守っています。
ある日、おじいちゃんが縁側で、
誰かと話している声がしました。
また、痴呆のせいで独り言を
言ってるのだろうと思い、
聞き耳を立てると・・・
「ふう・・・こうやって
ボケたフリをしている時しか、
お前(おばあちゃん)は俺を怒りに
来てくれないんだもんなぁ・・・
まったく・・・」
私は、おじいちゃんの愛の深さに
涙が止まりませんでした。
(終)
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