怖話ノ館(こわばなのやかた)
2016-8-29 08:30 [怖 67巻]
私の家の廊下の突き当たりは、
袋小路になっています。
定年になったばかりで
暇を持て余していた父が、
「スペースがもったいないので物置にする」
と言い出して、
一人で工事をし始めました。
何かに取り憑かれたように・・・
父はわずか一日の作業で、
上下二段の扉付きの物入れが出来ました。
翌日、家に帰ると、
居るはずの父が見当たりません。
また物入れの作業中かと思い
廊下へ出てみると、
物入れの扉には新たに南京錠が
取り付けてありました。
結局その日、
父は帰って来ませんでした。
そして翌日の晩、
不安になった母に、
「物入れの鍵を壊して中を見て」
と頼まれ、
私も父が鍵を付けてまで
しまい込んだ物が気になり、
南京錠の掛っている金具ごと、
丁寧に取り外しました。
すると、物入れの中には、
薄ら笑いで虚ろな目をしている父が、
体育座りでこちらを向いてました。
なぜ外から鍵が掛っていたのか?
なぜ父が中に居たのか?
残念ながら・・・
その日以来ボケてしまった父からは、
答えを訊くことが出来ていません。
今日も父は物入れの下段に入り込んで、
楽しそうに宙を見ながら笑っています。
(終)
タグ:ボケる, 取り憑かれる, 父親, 痴呆
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