黙って私の頭を撫でてくれた女の人

落ち込む

 

これは、少し不思議な体験をした話です。

 

ふと昔のことを思い出しました。

 

中学生の時に両親が離婚したけれども、その前後数年間は荒れ狂う家庭のことを誰にも相談できず、声を押し殺して泣きながら寝る日々が続いていました。

 

でも気付いたら目に見えないけれども、髪が肩くらいの長さの女の人が黙って私の頭を撫でてくれるような感じがする日が増えていきました。

 

次第に家庭が落ち着いていくにつれ、女の人の気配はやがてなくなり、いつしか存在を忘れていきました。

 

私が三十代になった頃、夢の中で静かに泣く女の子の頭を撫でるということが何度もありました。

 

そんなある日、昔の別の思い出を思い出しながら何の気なしに鏡を見たら、あの頃に頭を撫でてくれた女の人の姿に自分が似ていると感じたと共に驚愕し、瞬時に『今の私が過去の私に手を差し伸べていた』ことに気づきました。

 

その後しばらくの間は、寝る前に意識的に過去の私にイメージを送り続け、なんとなく「もういいかな?」と思い始めて、そうしなくなった途端に不妊症なのに子どもが授かりました。

 

(終)

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