遠泳実習を行う海岸に巨大なサメが
俺が通っている高校は体育系で、高校2年生の夏には『遠泳実習』という行事がある。
もちろん生徒にとっては苦痛極まりない行事で、毎年のように2年生になる生徒は愚痴をこぼしていた。
なにしろ、沖まで行って4~5時間も泳がなければいけないからだ。
体力の限界が来て溺れる生徒は毎年数人いる。
下手をすれば死ぬかもしれない。
俺たちってツイてる!
そして俺たちも2年生になり、遠泳実習を行う季節がやって来た。
実習の日が近づくにつれ、みんなの溜め息が多くなってくる。
しかし、そんな俺たちに朗報が舞い込んできた。
毎年遠泳実習を行っている海岸に巨大なサメが出没した、とのことだ。
このニュースを聞き、生徒の誰もが『遠泳実習中止』という言葉が脳裏に過ぎった。
予想通り急遽、特別ホームルームが行われることになった。
教室で先生を待つ俺たち。
その間、「俺たちってツイてる!」、「サメ様ありがとう!」などの言葉が教室で飛び交っていた。
そして、先生がやって来た。
教室のドアを開け、静かにツカツカと歩き、教卓の前に立った。
みんなが先生の第一声であろう”今年の遠泳実習は中止です”という言葉を待ち、ゴクリと唾を飲んだ。
そして、先生は口を開いた。
「えー、今からサメの退治方法を教えます」
生徒の誰もが一斉に机ごとコケた。
その瞬間、教室は揺れていたに違いない。
俺はこの先、一生忘れないだろう。
先生のあの冷静な口調と、ドリフ並にみんなが一斉にズッコケた光景、そしてサメの退治方法を。
あとがき
ちなみに、授業で習ったサメの退治方法はこうだった。
サメというのは獲物に喰らい付く時、一度沈んでから物凄い勢いで水面に向かって泳ぎ、その勢いで獲物を下から押し上げるように齧(かぶ)り付くそうだ。
なので、「サメが下から来るその瞬間に、出っ張っている箇所をカウンターで殴れ」と言った。
本当に無茶苦茶なことを言う先生だった・・・。
(終)
違う意味で怖え
脳筋にも程があるだろ(呆れ)