代々伝わる血の怨み卵と言われるもの
中学校の修学旅行の時、
怖い話をみんなで持ち寄ろう
ってことになったんだけど、
私はみんなが知ってるような話しか
知らなかったので、
祖母に教えてもらった話を。
みんなに聞かせる話だって
前ふりをしていなかったので、
この話は事情により、結局、
話せなかったのですが・・・。
私の祖母が母に聞いた、
ひいばあちゃんの話なので、
族柄表記だと分かりづらいため、
仮名にて話を進めます。
祖母の母の母・・・たえ
祖母の母の姉・・・ちよこ
祖母の母・・・よしこ
祖母の母よしこには、
5つ年上の姉ちよこがいたそうなのですが、
隣村の若い連中になぶりものにされ、
身ごもってしまい、
それを苦に、
ちよこは自殺したそうなんです。
母たえは怒り悲しみ、
半狂乱になって隣村の連中に
詰め寄りましたが、
そいつらは部落の娘が
そこらへんのおっさんとまぐわって、
勝手にはらんで死んだもん知るかって、
取り合わなかったそうです。
もちろん娘から聞いて真実を知る
母たえですが、
当時の差別的な環境下では、
どうすることも出来ず、
ただ『怨み呪う』ことのみ
だったそうです。
母たえは、よしこに、
「お前にも血の怨みを教えといたろ。
これはおねいちゃんの弔いやって」
凄く恐ろしい形相で、
言っていたらしいです。
すり鉢を用意して、
生剥ぎの亀の甲羅を焼いて割り入れ、
数種の獣の四肢の骨を砕き入れ、
獣の目と耳を湯がいてそれに加え、
最後に自分の月経血を垂らし、
それらをすり混ぜて、
粉末を作ったそうです。
その粉末をつがいの鶏に与え、
数個の卵を産ませ、
メスに抱かせ、
2週間半ぐらいで卵を採りあげ、
近所の馬頭の神さんを祀る神社に
供えて祈り、
また、持ち帰ったそうです。
ちょうど、彼岸明けぐらい
だったらしいです。
その卵を隣村の墓場に持って行き、
件の連中の家の墓石に投げつけたそうです。
潰れた卵からは、
ゼリー状の赤い粘液が
流れていたそうで、
ぶつけた時の『グシャ』っていう
音が耳に残り、
しばらく凄くイヤだったらしいが、
その時にやっと母たえに少し笑顔が
戻ったことが嬉しかったとも・・・。
その後、母たえは娘よしこに、
「お前も本当に許せないことがあれば、
このようにして怨みをぶつければいい」
・・・と。
目も見えず・・・
耳も聞こえず・・・
四肢も揃わず・・・
忌み嫌われたこの血をもって、
万年の輪廻を与えんと。
祖母が聞き覚えている墓石の銘は
ひとつだけだったのですが、
昨年、卒業した先輩に、
たしか障害をもった人が
いたような気がするのです。
こんな話、
修学旅行で出来ないでしょ・・・。
(終)