廃れた田舎に伝わる怨姫の呪い 2/3

 

それはノートの1ページ。

 

切り取られたその紙面には、

びっしりと赤が埋め尽くされていた。

 

「・・・血、か・・・?」

 

刹那、

俺の背後に気配を感じた。

 

すぐさま振り返るが、

もちろん誰もいない。

 

だが、

 

振り返った俺の背後から、

その声は聞こえた。

 

『ミィツケタ』

 

そして俺の視界に、

 

話しか聞いていないはずの

祖母の死に様が広がった。

 

両手足がもぎ取られたように亡くなり、

あの祖父と同じ赤い両目を見開きながら、

 

血の海の中に沈んだ祖母の姿が・・・。

 

だが、それは一瞬で、

元の視界が戻った。

 

しかし、

妙な違和感を覚えた。

 

その理由はすぐに分かった。

 

祖母の部屋の右半分が、

赤くなっていた。

 

辛うじて物を形どった線は

見えるものの、

 

色の概念は赤以外、

見つからなかった。

 

外に出て、

試しに右目だけ閉じる。

 

空には青白く光を放つ、

満月が見えた。

 

左目だけ閉じる。

 

満月を形どった、

 

円を覆い尽くさんとばかりの赤が、

空に広がっていた。

 

どうやら俺の右目は、

 

祖父母のあの赤い目と

化していたようだった・・・。

 

俺はポケットに放り込んでいた

名刺を手に取り、

 

090で始まるダイヤルに

電話をかけた。

 

「もしもし、

 

さっきA村まで乗せてもらった

乗客です!

 

すいません、

今すぐ来てもらえますか!?」

 

「別に構いませんが・・・

何かあったんですか?」

 

「話は車中で!

とにかく急いで!」

 

来た時に降ろしてもらった場所で

待ち合わせになったので、

 

走ってそこに向かった。

 

とにかく一刻も早く、

ここを抜け出したい。

 

目的地にはこの雑木林を

抜ければすぐだ。

 

しかし、

足を止めてしまった。

 

誰かに睨まれている・・・。

 

しかも、

囲むように全方位からだ。

 

刹那、

 

背後からカツッカツッと

ハイヒールで歩く音が、

 

こちらに向かって来る。

 

振り向くと、

 

数人の老婆が赤い目で睨みながら、

こちらに向かっている。

 

そして、

俺は愕然とした。

 

もちろん老婆がハイヒールを

履くわけがない。

 

さっきの音の真相は、

老婆が引きずっていた鍬だった。

 

「お、俺を殺すつもりか・・・」

 

すると老婆は、

 

『キキキキキキキキキキキキキキ』

 

と金切り声を上げ、

飛びかかって来た!

 

「・・・ッ!」

 

完全には避けきれず、

かすっただけなのに腕が裂けた。

 

息つく間もなく、

 

他の老婆が全方位から

襲って来た!

 

「う、嘘だろッ!」

 

俺は必死になって

前方の老婆に突進した。

 

幸運にも老婆は倒れ、

俺は跨いで走り逃げた。

 

『アアアアアアアアアアアアッ!!』

 

背後から叫びが聞こえた。

 

振り向くと、

 

倒れた老婆に、

 

俺に向けられていた鍬の雨が

降り注いでいた。

 

五臓六腑が弾け飛び、

 

真っ赤な噴水が老婆の群れに

降り注いだ。

 

俺はそれ以上振り向かずに、

 

ただ目的地を目指し、

雑木林を走り抜けた。

 

と、道が開けたところに、

 

タクシーがドアを開けて

待っていた。

 

彼は只ならぬ気配を、

早くも察知していたらしい。

 

「早く乗りなさい!

ホラ、早く!」

 

俺はそのままの勢いで、

後部座席に飛び乗った。

 

ドアが閉まったと同時に、

そのドアに老婆が突進してきた。

 

「うわッ!?」

 

更にタクシーを囲むように、

老婆の群れが突進してきた。

 

「しっかり捕まっていてください!」

 

彼はアクセルを全力、

 

ハンドルを一杯に回して、

老婆の群を退けた。

 

だが、

弾き飛ばされたにも関わらず、

 

老婆の群れは

アクセル全開のタクシーを、

 

人間離れした速さで

追いかけて来た。

 

しかし、しばらくして、

 

老婆は糸が切れた操り人形のように

崩れ落ちた。

 

「・・・ふぅッ・・・」

 

なぜか分からないが、

どうやら振り切れたようだ。

 

だが今も力は抜けない。

 

今までのどんな事よりも

怖ろしいことだった。

 

そして、

俺は自分の右目が、

 

完全に赤に覆い尽くされていた

ことに気付いた。

 

運転手の彼も

気が抜けたように、

 

「・・・危なかったですねぇ。

間一髪でしたよ」

 

「えぇ、ありがとうございます。

助かりました・・・。

 

でも・・・もしかして、

 

こうなることを知っていたんじゃ

ないですか?」

 

「・・・実は私も、

 

二十年くらい前にあなたと同じ

体験をしましてね。

 

今も胸に大きな裂傷が

残っています」

 

「どうして教えて

くれなかったんですか!」

 

「・・・故郷の村に、

 

そんな思いを抱かせたく

なかったんですよ。

 

私みたいにね」

 

彼は寂しそうに言った。

 

俺は自分のことしか考えていない

情けなさに、

 

口を詰むんだ。

 

ふと、俺は気づいた。

 

「・・・ところで、

どこに向かってるんです?

 

帰り道は反対ですが・・・?」

 

「その赤い目はね・・・

呪いなんです。

 

だから、

呪いを解きに行くんですよ」

 

呪い・・・

 

まさか作り話の中だけと

思っていた現象が、

 

自分の身に降りかかるとは。

 

そして俺は、

一番気になることを聞いてみた。

 

(続く)廃れた田舎に伝わる怨姫の呪い 3/3へ

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