悪ガキ仲間たちの「探検ごっこ」にて
30年以上も昔の話です。
場所は東京都の近郊。
とても怖くて悲しい思い出です。
僕は小学校低学年の頃、近所の悪ガキ仲間たちと『探検ごっこ』をしていました。
僕と従弟、それに隣の悪ガキと近所の悪ガキの4人であちこち行きました。
まだ埋められていない防空壕の跡や川原の茂み、大きな公園の奥の森の中。
子供の僕たちには広大な未知の空間でした。
お約束のエロ本なども落ちていて、まさに冒険でした。
公園のそばに古い民家(廃屋)があり、わりと大きな屋敷でした。
「夏休みにソコを探検しよう!」ということになりましたが、その時に隣の悪ガキが家族旅行で不在だったので3人で探検することに。
3人のうち1人が帰らぬ人に・・・
屋敷の門は鎖で閉じられ“立ち入り禁止”と書かれていたので、生垣の隙間から潜り込みました。
生垣で囲われた庭は背丈を超える雑草で覆われ、鬱蒼(うっそう)とした感じ。
建物は一部が崩壊していて、今にも朽ち果てる寸前でした。
家の周囲をひと回りすると雨戸が外れている場所があり、そこから屋敷の中へ入りました。
カビ臭い室内。
腐った畳は底が抜けそうな程で、ゴミも散乱していました。
タンスがあったので何気なく開けて見たりしていると、奥の部屋からなにやら物音が・・・。
襖(ふすま)を開けると、中年の女性が座っていました。
その女性は汚れきったグレーの浴衣姿で、恐ろしい顔をしてこちらを睨んでいました。
敷かれた布団の上に座り、青白い顔で僕たちを睨み続けています。
僕は何故か、“殺される・・・”と思いました。
僕たちは「スイマセン!」と叫び、慌てて逃げ出しました。
表へ出ると、いつの間にか外は真っ暗に。
僕たちは各々一目散に家へ帰りました。
そして不思議な事に、探検に出発したのは昼飯を食べたすぐ後で、探検していたのはせいぜい十分くらい。
ところが、家に帰ると夜の八時を回っていました。
僕はたっぷり叱られました。
しばらくすると近所の悪ガキのお母さんが来て、「うちの子供が行方不明なのよ。知らないかしら?」と話しているのが聞こえました。
僕と従弟が事情を話すと、親たちは廃墟の屋敷へ捜しに行きました。
しかし、その屋敷には誰もおらず、その子も見つからないまま翌日になりました。
朝になってから警官がうちへ来て、色々と事情を訊かれたりしました。
そしてその日の午後、公園の池に沈んでいるのが発見されました。
夏休みが終わる頃、廃墟の屋敷は取り壊されました。
僕たちがあの時に見た中年の女性は一体何者で、そもそも時間が急激に進んだ事も理解出来ていません。
(終)