すまん、この子はどうしても思い出せん
先日、小学校の同窓会があり、出席率のいい我がクラスは物故者以外全員出席していた。
ヨボヨボながら、恩師も健在。
○○小学校6年2組のメンバー勢揃い。
持ち寄った卒業アルバムの集合写真を指差しながら、「これは誰それ、それは誰それ」と微笑ましく名前を読み上げる恩師。
ああ、よく覚えてくれてるなあ、と数十年ぶりの恩師に感動しながら見ていたら指が止まった。
恩師は悲しそうな顔をして、「すまん、この子はどうしても思い出せん」と呟いた。
みんながそれを誰だか当てようとしたけれど、誰一人として思い出せない。
そのうちに、名簿と人数と顔を照らし合わせていったら一人多かった。
ところが、集合写真ばかりじゃなくて、遊んでいたり笑っていたりする写真にも、その男の子はあちこちに写っていた。
全員が、恩師も含めて記憶の無いその男の子の存在に、なぜか胸に引っかかるものを覚えたまま帰宅。
「思い出したら教えてくれよ」と、互いの電話番号も交換して別れたのだが、誰からも情報は届かない。
どこか時空の歪みに入ってしまって記憶からも消えてしまったのだろうか?などと、荒唐無稽な事を私は考えている。
※荒唐無稽(こうとうむけい)
言動に根拠がなく、現実味のないこと。
(終)