寝室の隅にカラスの羽根が・・・
初めて一人暮らしをした部屋で起きた怖い話。
私は、大学に入学と同時に一人暮らしを始めた。
帰っても誰も居ないのは想像していたよりも本当に寂しく、昼間は大学に入りびたり、夜は遅くまで出掛けていた。
そのため、その部屋にはほとんど寝に帰るだけだったのだが、入居して1ヵ月ぐらい経った頃だろうか、奇妙なことが起こった。
寝室の隅に『カラスの羽根』が落ちていたのである。
すぐにその部屋を出ることを決めた
たしかに、そのマンションの近くでカラスは多く見かけたが、寝室の窓は閉まっている上に、鍵も掛かっている。
少し疑問に思ったが、その時は大して気にもせずに羽根を捨てた。
しかし、それから私は何度も寝室でカラスの羽根を見つけることになる。
羽根は不定期に落ちていた。
それは小さな羽毛であることもあるし、大きくしっかりとした羽根であることもあった。
気味が悪いことに、血と肉のようなものが付いている時もあった。
しかも、徐々に落ちている頻度が増えているように思えた。
二度三度ならまだしも、週に1回のペースになってくると、夜に寝に帰っているだけとはいえ、さすがに不気味だった。
とはいえ、原因はさっぱり分からなかった。
そんな頃、大学が夏休みに入り、部屋で課題をすることが多くなった。
すると、カラスの羽根が落ちていることも不思議となくなった。
それで私は、やっぱり窓を閉め忘れていたのだろうと思うようになり、羽根のことを大して気にしなくなった。
夏休みも終わりに近づいたある日、無事に終わった課題を大学まで提出しに行こうと家を出た後、忘れ物に気付き、マンション前まで戻った。
「ギャア!!」というような高い声が空から聞こえ、上を見上げると、自分の寝室の窓が開いている。
出る前に間違いなく鍵を掛けた窓である。
そして、その窓に向かって、まさに今、カラスが飛び込もうとしていたのである。
いや、飛び込んで、という表現は正しくない。
カラスはむしろ、窓から逃げようとしている様だった。
しかし、何かの力により、無理やり連れ込まれようとしていたのである。
そして窓の中にカラスの身体が今にも入ろうかという瞬間に、人の手のようなものがカラスを掴み、すぐに部屋に引き込んだのだ。
そして静かに窓が閉まったのである。
頭が混乱した。
誰がどうやって入ったんだ?
どうやってカラスを捕まえているんだ?
私は急いで部屋に戻り、寝室の扉を開けると、いつも通りの部屋だった。
カラスの羽根は落ちていなかったが、微かに血のような匂いがした。
私はすぐにその部屋を出ることを決めた。
出てからすでに数年が経っている。
最近、そのマンションを見に行ったが、いつのまにか取り壊されてしまったようで、今は全く新しいビルに建て替わっていた。
(終)