念願の一人暮らしを始めたが・・・
私は数年前に念願の一人暮らしを始めた。
ワンルームで窓はベランダに続くガラス戸のみだったけれど、日当たりも良いので気に入っていた。
そのガラス戸にカーテンを付けた時、カーテンの丈が5センチほど足りない事に気が付いた。
まあ仕方ないなと思い、それはそのままにしておいた。
入居から数ヶ月経ち、ご飯を食べている時や座椅子に座って本を読んでいる時、なんだかその5センチの隙間に目をやるのが癖になっていた。
得体の知れない何か
その日も本を読んでいて何気なく隙間に目をやると、白い布がベランダに落ちていて、風になびいてヒラヒラしていた。
「あ、シャツが落ちてる!」と慌ててカーテンを開けると、洗濯物なんて一枚も干していなかったし、白い布も無かった。
今のは何だろう?と考えながら座椅子に戻ると、今度は電気が激しくチカチカと点滅し始めた。
私は途端に恐怖を感じ始め、急いで母の携帯に電話をした。
だけど、話し中だったり電波が届かなかったりで、なかなか繋がらない。
半泣きになりながら今度は家の電話の方にかけるが、それでもダメだった。
もしかして、得体の知れない何かと二人きり!?
どうしようもなく怖くて半狂乱になりそうな時、電気の点滅は収まり、それと同時に母の声が聞こえた。
泣き声の私に母は驚いていたけれど、事情を説明したら「大丈夫、大丈夫。お母さんがおるやろ?」と優しく慰めてくれた。
私はいい歳して情けないなぁと思いつつも、それがとても有り難かった。
たわいのない事を数分話したら落ち着いてきたので電話を切り、怖さを紛らわせる為にテレビをつけた。
そして、母からメールが届いた。
『そっちの方で停電があったみたいよ』
もちろん嘘だという事は丸分かりで、それが凄く可笑しくて一人で笑っていた。
すると、『違うよ』と言いたげに、またもや電気が激しく点滅しだした。
さすがに私は家から飛び出して、そのまま実家に帰った。
(終)