過去の自分の家族と出会った話
去年の冬、一人でファミレスで飯を食っていたら一組の家族連れが入ってきた。
何故か物凄い違和感を感じてその家族連れを凝視していると、ある事に気付いて震えた。
それは、俺が小学生くらいの頃の俺の家族だった。
親父も母親も若いし、俺も弟も無邪気な小学生の頃の姿。
そして家族は店員に案内されて、奥の席の方へ消えていった。
この店は札幌にはよくある『とんでん』という寿司メインのファミレスで、子供の頃は家族でよく行った。
俺は無性に気になり、その俺の過去の家族を見に席の方へ行ってみた。
小さい俺に伝えたかった事
家族は普通に雑談していて、他人が見たら服装が少し古くさい普通の家族にしか見えないだろう。
しばらくトイレの辺りで観察していたら、小さい俺がこっちに来る。
「トイレなら話すチャンスだ!」と思い、心臓をバクバクして待った。
思惑通りトイレに入ったので、俺もさりげなく続いて入った。
俺「今日は寒いね」
小さい俺「え、あ・・はい、寒いですね・・・」
「いつもここ来るの?」そう言いかけたところで、「違う違う、俺が言いたいのはそんなことじゃない」と思い直し、本当に伝えたい事を言った。
俺「ねえボク、キミのお父さんはね・・キミがもう少し大きくなったら遠くへ行っちゃうんだ(死別)。そしてね、その後に新しいお父さんがやってくる(義父と母が結婚する)。どちらも良いお父さんだ。キミにとっては辛いことかもしれないけど・・・」
子供の俺には理解できなかっただろう。
そんな話をグダグダしている俺を不審に思ったのか、小さい俺は「知らない人と話しちゃダメって言われてるから」と言ってトイレを出ていった。
ああ、もっと色々伝えたかったな・・・と思いつつ、さっきまで俺の過去の家族がいた席を見ると、家族ではなくカップルが座って飯を食っていた。
俺は驚き、店員さんに話してみたら、「家族連れですか?いえ、あそこはずっとあのお客様しか」と。
夢か?疲れてるのかな・・・と、凄く考えた。
でも本当に俺の家族だった。
小さい俺とも話したし、録音しておけば良かった。
・・・なんて色々考えながら、その日は帰って悶々としていた。
そして先々月くらいの事、またそのファミレスで飯を食っていて急に思い出した。
「そういや小学生の頃に変なお兄さんとトイレで話した!」と。
どうして急に思い出したのかは分からないが、確実に記憶として残っている。
そのトイレでの出来事も、当時は親父や母親にすぐそのファミレスの席に戻って話した。
案の定、「知らない変なオジサンとあんまり話したりしたらダメだぞ!」と怒られた。
今でも思い出すと少しメルヘンチックな気分になる。
(終)
タグ:不思議な体験談
過去にタイムスリップできたとしても
過去の自分達からは変な人と思われて
相手にされないんだろうなあって何か思った