深夜のツーリングを楽しんでいると
5年前の6月ぐらいに普通二輪の免許を取った。
それで、前から欲しかった400CCのバイクを買ってツーリングを楽しんだりしていた。
休日前の夜、暇だったので家の近くの山に軽く走りに行き、頂上にある駐車場でコーヒーを飲みながら休憩していた。
あれは本当にA君だったのか?
駐車場にはバイクは俺の1台だけで、他に車が3台ほど止まっていただけ。
車の中では仮眠していたんだと思う。
時間は深夜1時ぐらいだった。
コーヒーを飲み終わったらボチボチ帰るか・・・と考えていたら、後ろから「○○君」と呼ばれた。
振り向くと、フルフェイスのヘルメットを被ったままの友達A君だった。
A君と会うのは久しぶりで、少しの間、適当な話しをして盛り上がっていた。
A君は俺のバイクを見て、「運転したいけど400を運転できる自信がないから後ろに乗せて」と言ってきた。(A君のバイクは250のスクータータイプのバイク)
A君のバイクを駐車場の角に停め、後ろに乗せてゆっくり走り出した。
俺自身も二人乗りは慣れていなかったから、ずっと安全運転をしていた。
しばらく適当に走って広めの道路でUターンすると、そのまま駐車場に向かって逆戻り。
後ろのA君は、「メーターがかっこいい」とか「案外後ろの席は乗りやすい」とか色々な話をしながら駐車場の手前あたりまできた。
そして俺は、「しかし今日は寒いな~」と言って軽く後ろ見ると、A君がいない・・・。
「え!?どこかで落としたか!?」と思ったけれど、落ちるようなスピードで走っていないし、それにもし落ちたとしたら間違いなく気付くはずだ。
Uターンして道を戻ろうとして駐車場に入った。
すると、停めていたA君のバイクが無い。
もう俺の頭は「???」だらけだ。
走っている俺のバイクから降りて、自分の足で走ってバイクに乗って帰った?
いや、まずそれは絶対にないだろう。
そんな事をする必要もないと思う。
とりあえず俺はUターンして戻ってみたが、A君の姿は無かった。
状況がよく分からなくなったので、A君に電話してみた。
A君は家で寝ていた・・・。
「ついさっき山に来てなかったか?」と聞いたが、バイトから帰って来てからは1歩も外に出ていないらしい。
そもそも、俺が山にいる事すら知らないと言った。
それは当然だ。
俺は誰にも言っていない。
あれは本当にA君だったのか?
なぜフルフェイスのヘルメットを取らなかったのか?
A君ではなかったとすると、なぜ俺の名前を知っていたのか?
未だに分からない。
ちなみに、A君は今もピンピンしている。
(終)