原野で出会った馬のように顔の長い男達

洞窟

 

これは、じいちゃんが満州に徴兵されていた時の話。

 

じいちゃんはもう亡くなっている。

 

あまりにも労働がきつく、食事も貧しかった為に、同じ班の仲間10人程と脱走した。

 

しかし、逃げるにしても周りは寒冷植物が生い茂る原生林の原野だったので、途方に暮れてしまった。

 

地図で見ると山を越えれば鉄道があるらしく、距離にして30kmほど歩く必要があった。

 

だが、食事もほとんど支給されないような状態だったので、体力がなく、15kmほど山の中を歩いたあたりで動けなくなってしまった。

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馬のように顔の長い男達

仲間と簡単な小屋を作って寒さを凌いでいたが、このままでは遅かれ早かれ餓死か凍死する。

 

しかし動く気力もなく、仲間同士でくっ付いて寒さに耐えていたところに、小屋の入り口を塞いでいた針葉樹の葉を退(ど)かす者がいた。

 

じいちゃん達は「部隊に見つかった」と思い、最悪死刑を覚悟したが、葉を退かして中を覗き込んできたのは、“馬のように顔の長い長身の男”だった。

 

その男はじいちゃん達を見るや、驚いて走り去って行ったが、程なくして戻って来ると何人か仲間を連れていた。

 

毛皮を何重にも身に纏ったその馬のような顔の男達は、じいちゃん達を抱えると、走るように木々の間を進んで洞穴の中に連れて行った。

 

ほとんど死にかけていたじいちゃん達はされるがまま運ばれ、このまま殺されるのかと思ったが、もはや逃げる体力も気力もなかった。

 

男達は、じいちゃん達を洞穴の奥に運んで毛皮の上に寝かせると、すぐ近くで火を焚いて体をさすってくれ、ネギのような草を煮た汁や、酸っぱい南天のような木の実を持って来てくれた。

 

飢えていたじいちゃん達は夢中でそれらを食べて寝てしまった。

 

起きると、またその食事を持って来てくれて、3日程してだいぶ体力も戻り、男達に話しかけて御礼を言ったが、言葉は全く通じなかった。

 

もし追っ手の部隊に見つかると、この男達に迷惑がかかると思ったじいちゃん達は、話し合って鉄道に向かって進むことにした。

 

身振り手振りで御礼の意を伝え、感謝の品に自分達の持っていたナイフやマッチを渡して「自分達は行く」という意思を伝えると、毛皮と木の実をくれた。

 

それを着て森の中を進み、なんとか鉄道までたどり着き、町に出れたじいちゃん達は無事に生き延びることができた。

 

ただ、あの馬のような顔の男達は何者だったのか。

 

原住民なのか、それとも原始人の生き残りなのか、それ以外なのかは謎のままだったという。

 

(終)

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