何とも言い難い奇妙な違和感
これは、私が山で体験した不思議な話。
去年の夏、大白川添いの細い道を車で登ってダムに行った。
大学のサークルで行ったもんだから皆テンションが上がりっぱなしで、しまいには手近に落ちている流木や大きな石を湖面に向かってやたらめったら投げたりしていた。
そんな中、私だけは山深くて湖面が真っ青な湖という日本離れした風景に何だか違和感というか恐ろしさみたいなものを感じて、じっと静かに座ったままでいた。
結局は何も起こらず日も暮れてきたので帰途に着いたのだが、大白川添いの道から国道に出た途端に土砂降りにあい、皆疲れたのか車内はシーンと静まり返った。
白川村の宿泊施設に戻り、皆で大浴場に行った。
その時も私は何とも言い難い奇妙な違和感を覚えたままだった。
湯に浸かり、ゆっくりと今日のことを考えていたら、気づいてしまった。
違和感の正体に・・・。
大白川に向かう時と帰る時、今のメンバーじゃなかった。
誰か一人足りないのか、誰か一人多くなっていやしないか?
そして何の考えもなしに、ついそれを口に出して言ってしまった。
すると一緒に風呂に入っていたサークルのメンバーも、皆同じことを考えていたらしかった。
ただ、その違和感も一晩寝たら嘘のように消え去ってしまった。
一体あれは何だったのか、今でも不思議に思っている。
もしかしたら皆が節度なくはしゃいだから、山の神様に怒られたのかもしれない。
(終)