ひいばあちゃんが死んだ瞬間
物心がつく前の話。
もう30年以上も前になるが、ひいばあちゃんが死んだ瞬間を、俺は今でもよく覚えている。
縁側に座っていたひいばあちゃんが、動かなくなってパタリと倒れて死んでしまう。
大人になって母にその話をしたのだが、母が言うには、俺はひいばあちゃんの死に目には会えていないという。
ひいばあちゃんは縁側で一人、倒れて絶命していた。
その点だけは合致している。
臨終の日、俺は高熱を出していたらしい。
母が自転車の後ろに俺を乗せ、病院に連れて行こうとしていた。
祖母が心配で自転車で一緒に付いて来ていた。
熱でうなされていた俺が、突然目を開けて叫び出した。
「ばあちゃん!死ぬよ!!」
そう言うと、また目を閉じてうなされていた。
祖母は大層気持ち悪がったらしい。
そして、病院へ行き診察をしてもらって家に帰ったのだが、病院で別れた祖母から母に電話がかかってきた。
ひいばあちゃんが死んだ、という知らせだった。
なんでも、うなされていた俺を自転車に乗せて病院に連れて行っている頃に死んだとの事。
ひいばあちゃんが絶命する時、俺の魂だけが飛んで行ったとしか思えない、幼少の頃の不思議な出来事だった。
(終)