そこには男の子の死体がいる
『この中の配水管を登ると天井裏に行ける。そこには男の子の死体がいる』
小学生の時、そんな怪談話がありました。
壁の中には、配水管を通すための空間があります。
配水管を整備する為のその空間への小さな入り口が、校舎の1階と2階の廊下にありました。
小さな入り口は本来なら鍵で閉められているべきなのですが、なぜか2階のそれが開いていた時期がありました。
しかし、妙な気がします。
『死体がある』ではなく、『死体がいる』だったのです。
まぁ小学生の言葉なんてこんなものです。
僕たちはこの話の真偽が気になって仕方がありませんでした。
放課後、僕たちは確かめてみることにしました。
そこに居たのは・・・
メンバーは、リーダー格のA、泣き虫少年B、ヤンチャボウズC、そして僕の4人です。
A「ジャンケンで誰が行くか決めようぜ」
C「僕は嫌だ。行きたくない。服が汚れたら嫌だから」
B「僕も嫌だ」
A「なに言ってるんだよ!B!お前行けよ!」
B「嫌だよ」
ここでAとBは喧嘩になりました。
そしてAはBに無理やり登らせようとしましたが、Bが泣き出してしまい、結局Aが登ることになりました。
Aは入り口を開くと、のぼり棒の要領で登って行きました。
僕らはそれを入り口から覗き込むようにして、ただ眺めていました。
Aが上へ行くにつれて、だんだんと姿が見えなくなっていきます。
そしてAの姿が見えなくなった頃、Aは天井裏に着きました。
この時、まだBは顔を膝に埋(うず)めて泣いています。
僕「上はどうなってるー?」
A「あんまり見えないー。結構広いみたいー」
A「うおっ!」
(ガッコーン)
C「どうしたー?」
A「こけたー」
どうやら配管に躓いたようです。
A「ギャァー!!」
僕C「どうしたー!?」
A「なんかあるぞ!」
Aはすぐに上から配管を伝い、下へと戻り始めました。
しかし、途中で手を滑らせたようです。
Aは1階まで落ちました。
ゴォンという凄い音が響きました。
僕「A!大丈夫かー!?」
A「痛ってぇー」
Aが頭からじんわりと血を流しているのが見えました。
僕「おいB、C、泣いてないで先生呼んで来い!」
Bは顔を腕に埋めたままです。
C「B!何やってんだよ!」
Cは無理やりBの腕を掴みあげました。
Bは笑っていました。
悪意がこもった顔でニタニタと・・・。
B「嫌だ!」
Bは3階へと走って行きました。
僕はBを追いかけようとするCを引き止めて、二人で職員室に行きました。
先生に事情を説明して1階の入り口を開けてもらい、Aを助け出しました。
Aは頭を怪我していたので、すぐに病院へ連れて行かれました。
残った僕とCは先生に殴られて、こっぴどい説教を受けました。
次の日、Aは学校に頭と足に包帯を付けて登校して来ました。
奇跡的に足の打撲と頭を4針縫っただけで済んだようです。
僕とCは、Aに詰め寄りました。
僕「昨日、何を見たの?」
A「見たって言うか、触ったんだ。デカイ布の人形があった」
僕「それって死体?」
A「いや、やっぱりあれは人形だね。モフッとしたから」
C「そういえばB来てる?」
A「まだ来てないな」
結局、その日はBは登校して来ませんでした。
僕たちは放課後、先生に聞きました。
僕「先生、今日Bはどうしたんですか?」
先生「Bなら昨日から風邪だよ?お前たち、Bがどうしたんだ?」
・・・僕たちは青ざめました。
僕「昨日、本当にBは来てませんでしたか?」
先生「来てないよ。ほら、出席簿に書いてあるだろ」
出席簿を見ると、Bは確かに休みです。
僕たちは教室に戻りました。
A「なんであの時、Bは居たんだよ?」
僕たちはその時期、クラスでBをいじめていました。
なのに、何故にBは進んで肝試しに参加したのか。
そして、僕たちは何故すんなりとBを受け入れ、疑問を持たなかったのか。
C「Bは最後、3階に行ったよな。3階は屋上だぜ?それに行き止まりだし」
当時、屋上は危険なので、屋上のドアは鍵が閉められていました。
A「俺が登って行ったところは、ほぼ3階だよな?」
結局その日、僕たちは何が居たのか結論は出せませんでした。
でも間違いなく、Bのような何かは居たはずです。
(終)