ネットで知り合った8人のオフ会

ネットで知り合った8人の若い男女が、

オフ会をやる事になった。

 

ほとんどが、リアルでの面識は

無い者ばかりで、多少の不安もあった。

 

だが結局、みんなで集まって、

遊園地で遊ぼうという事になった。

 

そして当日になり、待ち合わせの場所に

次々と参加者が集まってきたが、

Aという名前の男だけが

なかなかやって来ない。

 

仕方がないので7人で行こうか、

という事になった時、

いつのまにか1人の若い男が

近くにいるのに気づいた。

 

そこで、もしかしたらと思い、

声をかけると、

「じゃあ、行きましょうか」

と言って彼は立ち上がった。

 

やけに不自然な言動だったが、

その時はみんな焦れていて、

たいして気にも止めなかった。

 

お互い簡単に自己紹介をした後、

最初のうちは

ぎこちなかった彼等も、

やがてワイワイと

賑やかに遊ぶようになった。

 

だが、Aだけはどこか打ち解けない

ところがあった。

 

普通に話はするし、

他の人に話題を振られても

反応はするのだが・・・。

 

どうも相手を見下して、

馬鹿にしてるような雰囲気があった。

 

チャットやBBSでは、

もっと積極的に話を盛り上げる

キャラだったはずなのに。

 

そのリアルでの性格のギャップに

みんな不審を抱いていた。

 

しかし、ネット上でもAは、

自分の事だけはあまり語らなかったので、

一体どういう人物なのかが

誰にもよくわからなかった。

 

その為、

一度は盛り上がった場もしらけてしまい、

日が暮れて、

今回はこれでお開きにしよう

という事になった。

 

ところが、それぞれが別れて帰る

という時になると、Aは、

「僕と同じ方向へ行く人がいたら

車で送りますよ」

と言った。

 

ほとんどの人は電車で来ていたが、

Aは車で来ていて、

近くに止めているらしかった。

 

確かにこれまでのAの冷めた調子には

気に食わないところもあったが、

彼の言葉に甘えれば、

電車賃がタダになる。

 

結局、Tという男と、Sという女が

Aの車に便乗させてもらう事になった。

 

こうして、初対面3人の

夜のドライブが始まった・・・。

 

Aの車は中古らしいが、

かなり手入れがされていた。

 

TとSは後部座席に座り、

Aの運転を見守っていたが、

Aは変にかっこつける事もなく、

安全運転を心がけていた。

 

車はやがて郊外に入り、

片側二車線の道に入った。

 

まだそんなに遅い時間でもないのに、

彼等の乗った車以外は、ほとんど無い。

 

窓の外には明かりがほとんど見えず、

時折ガソリンスタンドや

自販機の光が見えるばかりだ。

 

車内でTとSは、

たわいない雑談をしていたが、

Aは自分からは

何もしゃべろうとはしなかった。

 

時々話を振っても、

軽く受け答えするだけだった。

 

窓の外は、

暗い林がずっと続いている。

 

よく見ると、

たくさんの石の地蔵が並んでいる。

 

ライトの光に浮き上がるそれは、

ひどく異様だった。

 

頭が酷く欠けているものや、

口に亀裂が入って

不気味に笑ってるように見えるもの、

1つとしてまともなのが無い。

 

異様な光景に気づいたTとSは

気分が悪くなり、

さらに嫌な予感がした。

 

「この辺りは結構出るそうですよ」

 

珍しくAが自分の方から

ボツリと言った。

 

「・・・出るってなにが?」

「出るんだそうです」

「・・・だから、何が?」

 

Tが尋ねても、Aは何も言わない。

 

「あのう、この車、さっきから

同じところを走ってませんか?」

 

窓の外を見ていたSが言った。

 

「ほら、あのガソリンスタンドと自販機、

さっきも通りすぎましたよね」

 

確かに彼女が指差す先には、

それらの明かりが通りすぎてゆく。

 

「そんなことはないですよ」

 

と、答えたのはAだった。

抑揚のない棒読み口調だった。

 

「この道路は一本道ですからね。

郊外の道なんてみんな似てますから。

気のせいですよ」

 

Aは初めてと言っていいくらい

ペラペラとしゃべり、

最後に「ヒヒヒッ」と低く笑った。

 

その笑い声を聞くと、TもSも

それ以上は何も言えなくなった。

 

しばらく沈黙が続いた後、

Aは手をのばして

何やらゴソゴソやると、

カセットテープを取り出した。

 

「何か、かけましょうか」

Aは、テープをカーステレオに押し込んだ。

 

ところが音楽が流れてこないのである。

2,3分経っても、全く何も。

 

沈黙と圧迫感に耐えかねたTが

口を開いた。

 

「・・・何も聞こえないんだけど」

「・・・・・・」

「・・・ちゃんと入ってるの?」

「・・・・・・」

「・・・ねえ?」

「聞こえないでしょう? なんにも」

「・・・ああ」

「深夜にね、家の中で

テープを回しておいたんですよ、

自分は外出してね」

「・・・なんでそんなことしたわけ?」

「だって、留守の間に

何かが会話しているのが

録音できるかもしれないでしょ」

「・・・何かって・・・なんだよ?」

「・・・・・・」

 

Tは初めて、

相手が答えなくて良かったと思った。

 

それ以上、

Aと会話してはいけないと思った。

 

すると、Sが突然悲鳴をあげた。

 

窓の外には、

またあの不気味な地蔵が

並んでいたのだ。

 

「おい、とめろ!」

 

Tが叫んだが、Aは何も言わない。

 

「とめろ!」

 

さらにTが叫ぶと、

静かに車は止まった。

 

TとSは、転がるように車から降りた。

 

車はすぐに再発進して、

遠ざかっていった。

 

残されたTとSが辺りを見まわすと、

2人は顔を見合わせて

顔面蒼白になって震えた。

 

そこには石の地蔵など無く、

それどころか、

彼等が遊んだ遊園地のすぐ近くだった。

 

一本道をずっと走ってたのに、

どうやって戻ってきたのか

全くわからなかった。

 

それだけではなかった。

 

あとで他の参加者に

連絡を取ろうとしたら・・・。

 

なんと、Aは時間を間違えて

待ち合わせの場所へ来て、

待ちぼうけを食らって、

そのまま帰ったというのだ。

 

だとしたら、

オフ会に参加したあの男は

一体何者だったのか?

 

後日Tは、

ほとんど同じ道をたどる機会があったが、

道路の何処にも

石の地蔵など無かったという・・・。

 

(終)

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