その女の子は幽霊という感じがしなかった
人間には『場所の記憶』みたいなものってあるのかな?
私は白昼夢のようにそれを見たことがある。
といっても、たぶん数時間前の白昼夢。
※白昼夢(はくちゅうむ)
目覚めている状態で見る現実で起きた非現実的な体験や、現実から離れて何かを考えている状態を表す言葉。願望を空想する例が多い。(Wikipediaより)
私は、子供が多く来る文化施設に勤めている。
その日も閉館後の見回りも終わり、私と上司の二人以外は帰宅した頃、残務処理の途中でトイレに行きたくなった。
そして事務所から廊下へ向かおうとした時、目の前を「きゃははははっ」と凄く楽しそうに年中児(4歳)くらいの女の子が横切って行った。
一瞬わけが分からず、我に返って走り抜けて行った廊下を見たが、足音はもちろん姿もなかった。
しかし、幽霊という感じがしなかった。
まるで、昼間の楽かった時間が今もう一度再生された、という感じがした。
気のせいかな?と思った時、背後から上司が「私さん、今笑った?」と聞いてきた。
もし本当に子供が館内に残っていたら大変なので、「女児を見た気がする」と正直に言って、もう一度館内を見回ったがやっぱり何もなかった。
(終)