老人の男女は用水路を覗き込み、そして・・・
その日のジョギングは深夜0時頃だったと記憶している。
街灯は所々あるが中途半端な田舎の為、夜は暗い場所が多い。
少し大きめの用水路と並行している小道をゆっくりとジョギングをしていた俺は、数十メートル先に人の気配を感じた。
街灯の無い暗がりの為に顔の判別は出来なかったが、それが“老人の男女”だと雰囲気で分かった。
老夫婦が夜の散歩でもしているのだろう、よくある事だ。
薄気味悪い老人
そんな風に考えた俺は気にも留めずその老人の男女に近づいていったが、近づくにつれて彼らが少し妙な事をしているのに気がついた。
「上手だねぇ」、「ちゃんと出来てるねぇ」、「頑張れ頑張れ」等、その二人は楽しげな感じで用水路を覗き込みながら何やら話しかけている。
用水路の中は真っ暗で何も見えないにも関わらず、彼らは楽しそうに用水路に向かって声をかけている。
少し気味が悪くなった俺は、足早にその彼らを追い越した。
追い越した後も、彼らはずっと真っ暗な用水路に向かって声をかけていたように思う。
数日後、彼らが話しかけていた用水路の事が気になった俺は、ジョギング時間を早朝に変更して確かめにいった。
件の用水路に近づき、好奇心丸出しで中を覗き込むと、そこには5~6体はあっただろうか、汚い人形が手足がバラバラになった状態で捨てられていた。
その汚れ具合から、この場所に長時間あった物だと容易に想像できる。
あの老人の男女は、この人形たちに話しかけていたのだろうか?
あの老人の男女は、痴呆老人だったのだろうか?
色々と疑問が浮かんだが、薄気味悪さを感じた俺はそれ以来そのジョギングコースはなんとなく避けている。
(終)
老夫婦が深夜0時頃に散歩しているのは、よくある事ではない