うちの愛犬と仲良しだった近所の柴犬
これは5年程前、近所の柴犬が鎖を切っていなくなった話。
2~3日して、2キロほど離れた橋の近くで遺体が見つかった。
外傷などは見当たらなかったので、おそらく老衰で亡くなったと思う。
首輪には切った鎖の切れ端がぶら下がっていた。
その柴犬と亡きうちの愛犬は仲良しだったこともあり、飼い主のおばちゃんと「寂しいですね・・・」と話をしていた。
おばちゃんは今まで見たことがないくらい、悲しい顔の半笑いだった。
それから数日後、柴犬の小屋に全く同じ顔をした、全く同じ大きさの柴犬がいた。
「新しく飼ったんですか?」と聞いたら、違うらしい。
気づいたら小屋の中に居て、いくら追い払っても戻って来てしまうという。
あまりにしつこいのと、情が移ってきたのとで、もう放置しているとか。
柴犬にも色々な顔があるが、本当に瓜二つで、違うところと言えば性別くらい。
少し若くて、身体の毛は薄汚れていた。
その新しい柴犬は、まるで元からそこが自分の家だったように悠々と寛いでいた。
ここは田舎なので、野良犬の情報はみんなよく知っている。
でも、その犬は誰にも知られることなく、いきなり現れた。
結局、今でもおばちゃんに飼われているが、一体何者なんだろう。
ひそかに前から飼い犬の座を狙っていたのかもしれないが、おばちゃんを長い間悲しませない為の“何か”だと思いたい。
(終)