狐に化かされると噂になった場所にて
これは50年ほど昔のことになるが、母が子供の時に体験した話。
当時、広島県の庄原という所に住んでいた。
夜になると父が町の方まで飲みに行き、酔っ払って帰って来れないことが何度もあったそうで、まだ子供だった母が迎えに行っていたという。
ただ、町まで行くには小さな山を越えないといけなかった。
普段なら20分ほどで越えられるのに、その日は何故かなかなか着かない。
当時は10円で借りれた貸し本を見ながら、足元は懐中電灯で照らしながら歩いていたのに、まったく町に着かない。
すると、「おい、順子!何してんだ?」と声をかけられ、「えっ?」となって振り向くと、近所のおじさんだった。※順子(母の仮名)
おじさんが言うには、貸し本を見ながらその場で足踏みをしているから、様子がおかしいと声をかけたそうな。
その後、「狐に化かされたんだ」と言われ、お祓いのようなことをしたそうだが、頭に草履を乗せてしばらく待つだけだったと。
聞けば、他の人も同じ場所で同じようなことをやっていたそうで、村では「あの場所は化かされる」と噂になっていたという。
でも町まで行くにはその山越えが最短距離だったので、それからも通るしかなかったらしい。
あれから50年も経っているので今では町も多少は開けているが、当時は小山だったという。
ちなみに、場所はこの辺りになる。※リンク先はGoogleマップ検索
(終)