生き別れた双子の兄弟

双子の赤ちゃん

 

兄がいることは知っていた。

 

生き別れた双子の兄だ。

 

当時、あまりに生活が苦しく、

 

生まれたばかりの兄は

里子に出されたのだとか。

 

その兄とは大学入学が決まった3月に、

街でバッタリと出会った。

 

全く同じ顔だった。

 

間違えようがない。

 

兄も俺の存在を知っていた。

 

「今日は就活中で忙しいんだ。

次の日曜、会えないか?」

 

と喫茶店の名を告げると、

足早に去っていく兄。

 

そして日曜日。

 

兄の指定する喫茶店に入る。

 

小さくて古い店内。

 

5人程が座れるカウンターと、

4人掛けのテーブルが2つ。

 

兄はすでに、

手前のテーブルに座っていた。

 

奥のテーブルには、

40代後半と思える男女が一組。

 

「俺、大学行くし、

車も買って貰ったよ。

 

先週はスキーに行ったんだ。

 

兄ちゃん、

就活してるって言ってたけどさ、

 

仕事先、見つかってないんだろ?

家に戻っておいでよ」

 

兄は黙っていた。

 

「絶対そうした方がいいよ」

 

「・・・お前にはさ、

妹がいるんだよ・・・」

 

兄は泣いていた。

 

兄の涙を見て、

俺は全てを悟った。

 

(終)

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解説

里子に出されたのは、

兄ではなく「俺」の方だった。

 

義理の両親は俺を悲しませまいと、

実の両親のフリをしてくれていたのだ。

 

大学進学に、車購入、スキー旅行と、

 

何不自由なく生活させてもらっているようで、

今の俺は生活に満足している。

 

でも、真実を知った今、

俺はどう思うのだろうか?

 

きっと未だに貧しい本当の家。

 

兄や、存在を知らなかった妹を見て、

俺はどんなことを感じるのだろうか・・・

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