おうちに帰りましょう
最近、
ボクは毎日たけるくんと
公園で遊んでいます。
砂場で山をつくったり、
トンネルをほったりしていると、
あっというまに時間がたちます。
夢中であそんでいると、
学校のチャイムの音が
きこえてきました。
「あ、休み時間が終わっちゃう」
と、たけるくんが言いました。
ボクが笑いながら、
「だいじょうぶだよ。
まだまだ休み時間はあるよ」
というと、
たけるくんも「そうだね」といって、
ふたりで笑いました。
ボクたちは、
もう学校のチャイムを気にする
必要なんてないのです。
またしばらく遊んでいると、
公園のスピーカーから
夕焼けこやけが流れてきました。
「5時だ」
うす暗くなってきた空を見上げて、
たけるくんがいいます。
スピーカーからも、
「5時になりました。
おうちに帰りましょう」
と聞こえてきます。
「おうちに・・帰りましょう・・・」
と、たけるくんがつぶやく。
「ダメだよ。
この時間に帰ったら
バレちゃうよ」
ボクがそういうと、
たけるくんは小さくうなづきました。
すっかり暗くなってしまった公園で、
ボクたちはだまってブランコをこぎました。
そうして2時間ほど遊んだあと、
「また明日」といって手をふって、
たけるくんにさよならをいって、
おうちに帰りました。
(終)
解説
「ボク」と「たけるくん」、
二人とも大人である。
実はこの二人、
会社をクビになっていて、
早く帰るとクビになったのが
家族にバレるため、
毎日公園で遊んでいる。