日本兵の幽霊が出ると騒動になった学校
これは、私の知人が体験した話。
かなり昔になるが、知人が小学生の頃、学校で「日本兵の幽霊が出る」と騒動になった。
児童のみならず、保護者や教職員らにも「見た」と言う人がいた。
そんなある日、クラスメートの浜田の祖父が学校にやって来た。※名前は仮名
“気弱な波平”といった感じの老人だったが、「一晩中ここにいる」と言う。(波平=サザエさんに登場する磯野波平)
教職員らは老人の気弱な風貌に最初は断ったのだが、老人は強引に三晩も夜の学校にいた。
そしてそれ以来、日本兵は出なくなったので、『波平の幽霊退治』と子供らの話題になったらしい。
その知人が最近、元クラスメートの浜田と出会い、幽霊退治の後日談を聞いたそうだ。
あの後、多くの人が話をせがんだが、老人は何も語らなかったらしい。
何年か後、浜田が何気なく夜の学校は怖くなかったのか?と祖父に聞いみると、こう言ったという。
「覚悟を決めた軍人が幽霊になろうはずはない。よしんば、何かの理由があり心ならずも学校でさ迷っているのなら、帰る道を教えてやるつもりだった。」
「そうでないなら、子供達を惑わすただの卑怯者。そんなモノは恐れるに足らん。」
「あの時、幽霊は出なかったよ。おそらく、生きている卑怯者が子供達を惑わす為に作り話をしたのだろう。」
戦後、公職追放令が解除された後も、世に出ることなく静かに暮らしていた老人。
実は、海軍兵学校出身の”海軍士官”であったらしい。(士官=将校)
(終)