分霊のお祀りを疎かにした村
これは友人から聞いた、そのまた友人の話。
佐藤さんの住む村の社では、御霊分けされた『おきつね様』が祀られている。※名前は仮名
※御霊分け
分霊(ぶんれい、わけみたま)とは、神道の用語で、本社の祭神を他所で祀る際、その神の神霊を分けたものを指す。(Wikipediaより)
そのおきつね様は、村の中や各家々の周りをぐるぐると回っているそうで、佐藤さんの村では玄関先などで何もないのに躓いたり転んだりすると、「おきつね様に引っ掛かった」という言い方をするのだそうだ。
実際、佐藤さんも何度か玄関先で、何故か分からないのに躓いたり転んだりしたことがあるという。
村では以前、そのおきつね様のお祀りが疎(おろそ)かになった時期があったという。
すると、村の年寄りが次々と亡くなるということが起きた。
いくら亡くなったのが年寄りとはいえ、一つの村から立て続けに何軒も葬式を出すのは異様なことである。
相次ぐ葬式に、村の人々も「何かの障りではないのか?」と思ったらしい。
そこへ、おきつね様の本社(ほんやしろ)がこんなことを言ってきたという。
「御霊分けしたはずのおきつね様がこちらに戻られていますが、何かあったのでしょうか?」と。
それを聞いた村の人々は、すぐにおきつね様のお祀りをし直したところ、あれほど続いていた人死にがぴたりと止まったという。
(終)