真夏に真っ赤なコートの女

ある夏の日、高校生だった俺は

コンビニで立ち読みをしていた。

 

コンビニって、

ガラス面側に本棚を置いてあるところが

多いですよね?

 

ふと本読みながら外に目をやると、

真夏なのに、真っ赤なコートを

着てる女が立ってたんです。

 

その時は、真夏にコートなんてという

違和感は感じず、

その女がかなり綺麗だったんで、

「可愛い姉ちゃんがいるなー」

って、気にせず雑誌を読んでた。

 

雑誌を読みながらも、

ちらちら女の方を見てたんです。

 

そしたら気のせいか、段々こっちに

近づいて来てるんですよね。

 

「ちょっとおかしくないか?」

 

段々そう思えてきて、

真夏に真っ赤なコートもおかしいだろ、

と感じた。

 

ちょっとやばい人だな、これは。

 

そう思って目を合わさないように、

もう読み終わった雑誌を、

黙々と眺め続けた。

 

そして、5分くらい経って、

「もう、どこか行っただろ」

って思って、見てみたんですよ。

 

そしたら、いるんですよ。

 

しかも、ガラスに当たるか

当たらないかの真近に。

 

でも、それ以上にびっくりしたのが、

女の目。

 

さっきまで可愛いと感じてた顔は、

全く変化なかったんですが・・・

 

目だけが、まるでクレヨンで

塗り潰したように真っ黒。

 

顔は、笑うでもなく怒るでもなく、

無表情。

 

真っ黒な目だけが、

ずっとこっちを見つめてるんです。

 

びっくりしすぎて、

10秒くらい見つめ合ったまま、

硬直してしまいました。

 

読んでいた雑誌を落としてしまい、

落ちた音で我に返り、

雑誌を拾おうと下に目をやると、

怪談の漫画みたいなのが落ちてたんです。

 

僕が読んでいたのは、メンズノンノ。

それは間違いありません。

 

しかし、落ちていたのは

怪談の漫画。

 

しかも、気付いてしまった。

 

その漫画の表紙のサブタイトルには、

「大阪泉の広場に出る赤い女」って。

 

僕がいるコンビニは、

泉の広場から階段を上がって、

すぐのコンビニ。

 

もう、一心不乱でHEPの方まで

走って逃げました。

 

(終)

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