入山禁止の掟を破った祖父の行く末
これは、伐採を生業としていた祖父の話です。
ある日のこと、祖父は「買ったばかりのチェーンソーを山に忘れてきてしまったので取りに行く」と言い出しました。
しかし、あいにくその日は『山の神様が木を数える日』で、村では山に入る事を禁じていたのです。
いつもは頑なにその掟を守る祖父ですが、なぜかその日だけは家族がどんなに止めても聞き入れませんでした。
結局、皆の反対を押し切って、祖父は一人で山に入ってしまいました。
それが祖父の生きた最後の姿でした。
翌日、家に帰らぬ祖父を村中の人間で捜しました。
夕方近くなった頃、良い枝ぶりの大木に、ビニール紐を括り付けて首を吊っている祖父が発見されました。
なんでも、山の神様の日に山に入ると、神様が間違えて木と一緒に数えてしまうと言われています。
あとがき
山の神様が木を数える時、「これで○本目」と目印に木を捻るので、間違って捻られないように入山禁止なんだと、松谷みよ子さん(児童文学作家)の民話集で書かれています。
普段は頑なに守っていた掟なのに、一番入ってはいけない日に誰が止めても行ってしまったのは、もしかすると何かに呼ばれていたのかもしれません。
それか、その日を理由に初めから首を括るつもりで出て行き、誰にも邪魔されずに逝けるタイミングなので無理にでも行ってしまったのでしょうか・・・。
(終)