忘れていた亡き友達からの誘い

階段

 

これは、ずっと前に亡くなった友達のサユリ(仮名)が夢に出てきた時の話。

 

サユリの13回忌の前週に、「これからうち遊びに来ない?」と誘われる夢を見た。

 

彼女が亡くなったのは別々の大学に進学してからだったが、格好は知り合った頃の高校時代の制服姿だった。

 

サユリは高1の頃、人と話す時は左右に体を振ってスカートを揺らすぶりっ子もどきの癖があって、俺はすっかり忘れていたが夢の中でもそんな感じにフラフラとした仕草をしていた。

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もし付いて行ってたら・・・

サユリの周りには一緒に歩く他の友達の姿もちらほらといて、『ああ、いつもみたいにみんなでゲームをしたりダベったりすんだな』と思った。

 

ただ俺はその時、現実でのスケジュールを頭に思い浮かべるのだが、なぜか学生時代の感覚で「あーすまん、夜バイトだわ」と答えた。

 

するとサユリは、「そっか、じゃあね。21日は空けといてね」と言って、手を振ったまま遠くに行ってしまった。

 

俺は、ずっとその去って行く姿を見ていた。

 

『ああ、あいつ通学は電車だったっけかな・・・』なんて思いつつ、『21日かぁ・・・何かあったっけ?』と考え始めた途端に、夢の中での頭が現実の頭に戻った。

 

そして、『あ、あいつ死んでる。しかも今月の21日はあいつの命日だ!』と思い出すと、俺は勢いよくガバッと起きた。

 

薄情だが、すっかりサユリのことをかれこれ数年以上も忘れていて、むしろ夢の中で命日を思い出した自分に驚いたし、忘れていた自分のあまりの不甲斐なさに、深夜にもかかわらず嫁にびっくりされるほど声を上げてボロボロと泣いた。

 

いつもならどんなに衝撃的な夢でも、起きれば数時間でぼやけて1日も経てば忘れてしまうのに、なぜかその夢では喋った言葉や仕草や服装まで、ずっとはっきり覚えていた。

 

サユリの命日には、高校時代の仲間みんなに声をかけて線香をあげに行った。

 

さすがに誰にもそんな夢を見たなんて言わなかったが、結構な人数が集まった。

 

卒業から15年も疎遠だった人でも不思議と連絡が取れて自分自身も驚いたし、ずっと疎遠だったからサユリの親御さんも驚きつつ喜んでくれた。

 

でも、『夢の中でバイトなんてサボってみんなと遊びに行っていたら、もっとサユリと話せたのかな・・・』と、ふと思う。

 

逆に、バイトをサボって遊びに行っていたら、そのまま現世へ帰って来れなくなってしまい、永遠に目が覚めなかったかもしれないが。

 

なので、きっと夢の中とはいえ、付いて行かなくて良かったと思っている。

 

(終)

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