すれ違いざまに足をかけられ転んだ直後に
これは、とある旅先で遭遇した話。
駅を出てタクシーに乗ろうと思い、タクシー乗り場へ歩いて向かっていたところ、すれ違いざまに足をかけられた。
私はその場で転んでしまい、持っていた荷物を一部ばら撒いてしまったのだが、足をかけてきた若い男はそのまま歩いてその場から去ろうとしていた。
なので私は雑に荷物をバッグに詰め込み、足をかけてきた男に詰め寄ろうと思ったその時だった。
向かっていたタクシー乗り場に猛スピードでダンプカーが突進し、鉄筋の雨よけまで倒れるほどの大事故が起きた。
一瞬呆然とするも、ひとまず足をかけてきた男に駆け寄り、なぜ足をかけたりしたのかを聞いてみた。
すると男は、「転んだくらいで済むんだ、その方がいいだろ」とだけ言って、そのまま改札を通って駅の中に入って行ってしまった。
もしあのままタクシー乗り場に行っていたら、私は間違いなくこの大事故に巻き込まれていただろう。
あの男は一体何だったのか、今でも謎で仕方がない。
(終)
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