何処からともなく聞こえてきた奇妙な声
これは、奇妙な体験をした伯父の話。
山で仕事をしていると、何処からともなく声が聞こえた。
「三日借りるぞ」
何のことだか全くわからない。
不思議なこともあるもんだと、その日はそこで山を降りた。
翌日に作業場へ登ると、隅の方にびっしりと『茸のようなもの』が生えていた。
何となく手を触れるのが躊躇われ、そのままにして仕事を終わらせた。
さらに次の日、色も鮮やかな茸モドキは、目を見張る早さで成長していた。
三日目になると、茸モドキは伯父の膝高まで大きくなっていたそうだ。
そして四日目、怪しげな茸は綺麗さっぱり消え失せ、場は元通りになっていた。
…なるほど、確かに三日だけ借りると言っていたな。
しかし一体誰が、何のために、作業場を使っていたのだろうか?
その後、声は聞こえていないが、いざという時のために作業場はできるだけ綺麗に保っているのだという。
(終)
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