後ろからケンケンと飛び跳ねる音
これは、知り合いの話。
彼の地元の山では、夕暮れ時になると”不気味なもの”が現れるのだという。
薄暗い山道を歩いていると、後ろからケンケンと飛び跳ねる音が近づいて来る。
振り向くと、一本足の真っ黒い影がこちらの後を追って来ている。
影は人の形をしてはいるが、酷く頭でっかちで、両手がやけにひょろ長い。
地元では『カタケンパ』と呼ばれており、案山子が化けたものとして恐れられていた。
というより、頑なに「アレは案山子だ」ということにしようとしていたものらしい。
ある時、気の強い若衆が「案山子などどこが怖いものか」と大見得を切って、カタケンパの出る山に向かったことがある。
しかし、幾ら待てども男は帰って来なかった。
しばらくしてから、追って来るカタケンパの数が「二体に増えた」という噂が流れた。
それからというもの、カタケンパに近づこうという者は出なくなったとか。
彼自身は、その山道を歩いたことはないという。
「たとえ片足が出なくとも、あそこは十分に気味が悪いから」
…なのだそうだ。
(終)
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