ここら辺にゃヒトリが居るからなぁ
これは、山仲間が体験した不思議な話。
彼が学生時代、部活で夏山を縦走していた時のこと。
そろそろ宿営の準備をしようかという頃合に、ちょうど良い平地を見つけた。
しかし先輩たちはそこを避け、もう少し先でキャンプするよう指図をする。
「ここ、何かダメな理由でもあるんですか?」
なんとはなしに彼が尋ねると、先輩の一人が教えてくれた。
「あぁ、ここら辺にゃ”ヒトリ”が居るからなぁ。地の人は”ヒトリマ”とも読んでるけど」
…と続けながら、ライトを取り出して彼の目の前で点灯する。
ライトは普通に点灯したのだが、段々と光が弱くなり、やがてすぅっと電池が切れたかのように消えてしまった。
「これ、部の備品で、まだ電池替えたばかりなの知ってるよな。でも、この平地から離れたら普通に使えるようになるから。何故かここって、かなりの確率でライトや火が消えてしまうんだ。だから“火獲り”って昔から呼ばれてるらしいよ」
確かにそこを離れると、消えたライトは再び点(とも)るようになったという。
不思議なこともあるもんだなぁ、と彼は感心したそうだ。
(終)
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元の字を見ると昔からいる妖怪とかだと思いますが松明の火を取るから現代のライトの光を取ることができるのすごいですよね、妖怪とかも時代にあわせて学習するんですね