深夜に走る列車の正体
中学生の頃、
学校に七不思議があった。
まあ、どこにでもある
音楽室のピアノがとか、
保健室の模型がとか、
ありふれたものだったんだが。
そのうちの一つに、
『学校から一番近い踏み切りに、
深夜幽霊列車が通る』
ってのがあった。
当時、受験用の自己補習で、
学校に遅くまで残ることが多くて。
その日も何人かで
夜の9時くらいまで学校に居て、
その事が話題になった。
盛り上がっていると、
Wという知ったか君が、
「どうせ回送か貨物が
夜中に走るのを見て、
大袈裟になったんだろ?
くだらねえな」
と言い出した。
私を含め、
みんなそうだろうとは思ったが、
Wのことが気にいらないので、
「いや、そんなことない。
お前だって見たわけじゃ
ないだろ?」
と言い合いになった。
なら、今日の帰りに
確かめてみようとなった。
最終電車の時刻を調べたり、
親に友達の家に泊まると
連絡したり、
色々小細工をして、
深夜2時頃踏み切りに向かった。
その踏み切りは、
別になんてことはない
普通の踏み切りで、
ただ辺りが暗いせいか、
何となく不気味に見える程度。
30分位、
みんなで来ないねえ、
時間が違う?
そもそも嘘?
とか言いながら待ち続けると、
遠くにライトの光が見えた。
「電車だ!」
遥か遠くの線路上に、
光が見える。
私達は踏み切りの脇で、
息を呑みながら見守った。
来た電車は、
ただの貨物列車だった。
なんだつまらん。
「おい、W。
お前の言う通りだな」
と声を掛けようとしたら・・・
別方向からまた電車が来た。
今度は普通の電車だ。
中の明かりは点いていなかったが、
普通の電車だ。
私達はただ貨物列車と
普通の列車が、
目の前を通り過ぎるのを
見守った。
「ただの電車だったな」
「損した」
などと、
みんなが話してる中で、
Wだけ無言だ。
こんな時、奴の性格なら、
それ見た事かと
大騒ぎするはずなのに。
「W、なに黙ってんだよ」
「お前の勝ちだな」
それでもWは何も言わない。
「なんだよ、どうしたんだよ」
Wは、やっと答えた。
「あの線路は単線のはず。
なのに上りと下りが同時に来た・・・」
(終)