ポストに入っていた古ぼけた手紙 3/3

郵便

 

手紙にはそのように書かれていました。

 

管理人の話では、

 

今A子さん達が住んでいる部屋は、

この手紙の送り主であろう、

 

女性の両親が住んでいた

部屋だったのです。

 

20年前に書かれた?であろう

この手紙が現実に届くなんて・・・

 

ありえません・・・。

 

A子さんは図書館に

走りました。

 

そして、20年前の新聞を

手当たり次第に読み漁り、

 

そして発見しました。

 

20年前に千葉の某駅の

入り口で、

 

恋人と待ち合わせていた

であろう女性が、

 

酔払い運転の暴走車に

ひき逃げされ、

 

ちょうど待ち合わせの時間に

居合わせた彼が、

 

すぐに救急車を呼んだのも空しく、

彼女は即死だったそうです。

 

A子さんはこの事故の件を

管理人に話すと、

 

この事件を知っていた管理人は、

遠い目をしながらこう話したそうです。

 

この夫妻の娘は、

 

黒髪がとても綺麗な腰近く

まであるロングヘアーで、

 

漆黒のような黒髪も相まって、

 

やまとなでしこという

言葉がぴったりの、

 

とても清楚で綺麗な女性

だったそうです。

 

両親も娘の結婚を楽しみに

していたそうです。

 

しかし、

この事件で娘を失った○○夫妻は、

 

娘が死んだ土地にいるのは

さすがに辛いという事で、

 

夫の実家である地方の田舎に

引っ越していったそうです。

 

現実に存在するはずもない手紙に、

 

なんとも言えない違和感を

感じながらも、

 

いたたまれなくなったA子さんは、

 

この手紙を田舎にいる両親に

送ろうかとも思いましたが、

 

過去の辛い思い出を

 

ぶり返させてしまうのも

忍びないと思い、

 

あるお寺の住職に渡し、

供養してもらう事にしました。

 

お寺の住職に手紙を渡し終え、

 

心の中で手を合わせて、

女性の冥福を祈りました。

 

そして、A子さんは

千葉に帰るために、

 

地下鉄のホームで電車を

待つことにしました。

 

時間帯が良かったのか、

待っている人は誰もおらず、

 

一人でベンチのような

腰掛に座って、

 

晩御飯のおかずどうしようなんて、

他愛も無い事を考えていると、

 

地下鉄に列車が入ってくるのを

知らせるアナウンスが鳴り響き、

 

ゴゴゴゴーという音とともに、

列車がやって来ました。

 

腰掛を離れ、

 

誰もいないホームで

黄色線に足を運ぶと、

 

ふと階段方向から

懐かしい声がしました。

 

声の主は学生時代の

親友のN子でした。

 

しかし、N子の顔色が

なんとも優れないのです。

 

体の調子が悪いのかなぁ

と思いながらも、

 

久しぶりの再会ということで、

というより・・・

 

N子の強い押しもあって

電車には乗らず、

 

駅の中にある喫茶店でお茶でも

飲もうという事になりました。

 

懐かしさのあまり、

二人は時間が経つのも忘れて、

 

卒業してからの事や、

 

付き合ってる男性の事

などを話しました。

 

そして話題も尽きると、

 

A子は不思議な手紙の件を

N子に話しました。

 

すると、

 

ただでさえ冴えない

N子の顔色が、

 

より一層真っ青に

なったのでした。

 

手紙の話を聞いてしまったN子は

言えるはずもありませんでした。

 

先ほど駅のホームで、

 

乗り口に進入してくる列車に向かって

歩き出すA子の後ろに、

 

やけに古い格好をして

腰まである黒髪の女が、

 

鬼のような形相でA子をホーム下に

落とそうとしている姿を・・・。

 

(終)

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