寂れた店で見つけた古い玩具 1/3
先日、
アンティーク好きな彼女と
ドライブがてら、
骨董店やリサイクルショップを
回る事になった。
俺もレゲーとか
古着などが好きで、
掘り出し物のファミコンソフトや
古着などを集めていた。
買うものは違えども、
そのような物が売ってる
店は同じなので、
楽しく店を巡っていた。
お互い掘り出し物も
数点買う事が出来、
テンションが上がったまま
車を走らせていると、
一軒のボロッちい店が
目に留まった。
俺「うほっ!
意外とこんな寂れた店に、
オバケのQ太郎ゴールドバージョンが
眠ってたりすんだよな」
浮かれる俺を冷めた目で見る
彼女と共に、
俺は店に入った。
コンビニ程度の広さの
チンケな店だった。
主に古本が多く、
家具や古着の類はあまり
置いていない様だった。
ファミコンソフトなんかは、
究極ハリキリスタジアムが
嫌がらせのように1本だけ、
埃を被って棚に置いてある
だけだった。
もう出ようか、
と言いかけた時、
彼女「あっ!」
と彼女が驚嘆の声を上げた。
俺が駆け寄ると、
ぬいぐるみや置物などが
詰め込まれたバスケットケースの前で、
彼女が立っていた。
俺「何か掘り出し物あった?」
彼女「これ、凄い」
そう言うと、
彼女はバスケットケースの
底に押し込まれる様にあった
正20面体の置物を、
ぬいぐるみや他の置物を
掻き分けて手に取った。
今思えば、なぜ、
バスケットケースの底にあって
外からは見えないはずの物が、
彼女に見えたのか・・・。
不思議な出来事はここから既に
始まっていたのかも知れない。
俺「何これ?プレミアもん?」
彼女「いや、見たことないけど・・・
この置物、買おうかな」
まぁ、確かに何とも言えない
落ち着いた色合いのこの置物、
オブジェクトとしては悪くない
のかも知れない。
俺は、安かったら買っちゃえば、
と言った。
レジにその正20面体を持って行く。
しょぼくれたジイさんが、
古本を読みながら座っていた。
彼女「すいません、
これいくらですか?」
その時、
俺は見逃さなかった。
ジイさんが古本から目線を上げ、
正20面体を見た時の表情を。
驚愕、としか表現出来ないような
表情を一瞬だけ顔に浮かべ、
すぐさま普通のジイさんの
表情になった。
店主「あっ、
あぁ・・・これね・・・
えーっと・・・
いくらだったかな。
ちょ、ちょっと
待っててくれる?」
そう言うと、
ジイさんは奥の部屋(おそらく自宅兼)
に入っていった。
奥さんらしき老女と、
何か言い争っているのが
断片的に聞こえた。
やがて、ジイさんが1枚の
黄ばんだ紙切れを持ってきた。
店主「それはね、
いわゆる玩具のひとつでね、
リンフォンって名前で。
この説明書に詳しい事が
書いてあるんだけど」
ジイさんがそう言って、
黄ばんだ汚らしい紙を広げた。
随分と古いものらしい。
紙には、例の正20面体の絵に
「RINFONE(リンフォン)」
と書かれており、
それが「熊」→「鷹」→「魚」に
変形する経緯が絵で描かれていた。
わけの分からない言語も
添えてあった。
ジイさんが言うには、
ラテン語と英語で
書かれているらしい。
店主「この様に、
この置物が色んな動物に
変形出来るんだよ。
まず、リンフォンを
両手で包み込み、
おにぎりを握るように
撫で回してごらん」
彼女は言われるがままに
リンフォンを両手で包み、
握る様に撫で回した。
すると、
カチッという音がして、
正20面体の面の一部が
隆起したのだ。
彼女「わっ、すご~い」
店主「その出っ張ったものを
回して見たり、
もっと上に引き上げたり
してごらん」
ジイさんに言われる通りに
彼女がすると、
今度は別の1面が陥没した。
彼女「すご~い!
パズルみたいなもんですね!
ユウ(俺)もやってみたら?」
この仕組みを言葉で説明
するのは凄く難しいのだが、
トランスフォーマーという
玩具をご存知だろうか?
カセットテープが
ロボットに変形したり、
拳銃やトラックが
ロボットにという、
昔に流行った玩具だ。
※参考画像(トランスフォーマー玩具)
このリンフォンも、
正20面体のどこかを
押したり回したりすると、
熊や鷹、魚などの
色々な動物に変形する、
と想像してもらいたい。
もはや、
彼女はリンフォンに
興味深々だった。
俺でさえ、
凄い玩具だと思った。
彼女「あの・・・それでおいくら
なんでしょうか?」
彼女がおそるおそる聞くと、
店主「それねぇ、
結構古いものなんだよね・・・。
でも、私らも置いてある事すら
忘れてた物だし・・・。
よし、特別に
1万円でどうだろう?
ネットなんかに出したら、
好きな人は数十万でも
買うと思うんだけど・・・」
そこは値切り上手の
彼女の事だ。
結局は6500円にまで
まけてもらい、
ホクホク顔で店を出た。
次の日は月曜日だったので、
一緒にレストランで晩飯を
食べ終わったら、
お互いすぐ帰宅した。