ドルイド信仰と儀式の生贄 3/4

クヌギ

 

何とか旦那を説き伏せて、

 

暖かいコーヒーを飲みながら、

3人が落ち着いてきたその時。

 

旦那の携帯が鳴った。

 

奥さんの声が否が応でも

聞こえてきたという。

 

ヒステリックな金切り声だ。

 

明らかに、

 

「殺したの?」

「捧げたの?」

「やったの?」

 

と、傍の叔父にも

聞こえてきたという。

 

あんなに温厚に見えた

奥さんの方が、

 

実はこの件では主導権を

握っていたのだと思い、

 

ゾッとしたという。

 

奥さんは東京のマンションから

電話をしているらしい。

 

旦那は、ある程度は

言い返してはいたが、

 

奥さんの凄い剣幕に、

終始押され気味だったという。

 

たまりかねた叔父が

電話を代わり、

 

物凄い口論となった。

 

それは、

一時は殺されそうになり、

 

まだ片方が殺意を剥き出しに

しているのだから、

 

激しい感情のぶつかり合い

になるのは至極当然だろう。

 

叔父の彼女も、

 

先ほどの涙とは

打って変わり、

 

叔父に負けじと

口論に加わったという。

 

「こりゃ、将来は

尻に敷かれるなぁ、

 

と思ったね、その時は」

 

叔父は苦笑しながら言った。

 

確かに今は、

尻に敷かれている様だ。

 

やがて、

叔父がたまりかねて、

 

警察や裁判沙汰を

ちらつかせる様になると、

 

ようやく奥さんも大人しくなり、

 

渋々旦那の話も聞くように

なってきたという。

 

一応、イザコザの

一段落はついた。

 

さすがにその日は

深夜になっていたので、

 

その別荘で休む事になった。

 

「一応さ、

話はついたけど、

 

まさか眠るわけには

行かないよな。

 

あんな事されそうになって」

 

暖炉の広間で、

 

叔父と彼女が

身を寄せ合って座り、

 

離れた場所に、

 

旦那が申し訳なさそうに

座っていた。

 

「明日、

 

旦那の知り合いの業者に

手伝ってもらい、

 

クヌギの木は切り倒す事を

約束してもらったからさ、

 

それを見届けるまではな」

 

3人とも、その日は寝ずに

朝を迎える予定だった・・・。

 

夜もさらに深まった、

午前3時頃だったという。

 

『ザッ、ザッ、ザッ』

 

と、森の奥から

 

何かが近づいて来る

音が聞こえた。

 

野生の動物か、

野犬か。

 

コックリコックリと

舟をこいでいた叔父も、

 

その音に目が覚めた。

 

「明らかに人間に近い

足音と気づいた途端、

 

ゾッとしたね」

 

最初は奥さんが来た、

と思ったらしいが、

 

あの電話を終えてから

こんな短時間で、

 

ここまで来れるわけがない。

 

いや、あの電話は、

 

実は近くから掛けていた

としたら・・・

 

もしくは、

他に仲間がいたとしたら・・・?

 

叔父は寒さなどお構いなしに

全ての窓や戸を開け、

 

アウトドア用のナイフを手に、

臨戦態勢で息を殺していた。

 

ザッ、ザッ、ザッという音は

一向に止む事はなく、

 

明らかにこの小屋に

向かっている。

 

「それから10分後

くらいかな。

 

もうな、普通にこの小屋を

訪ねて来るように、

 

玄関の戸に立ったんだよ。

 

足音の主が」

 

「○○?(奥さんの名前)

 

と旦那が叫んだ。

 

が、すぐに、

 

驚愕から恐怖の悲鳴に

変わった。

 

「奥さんの様で、

奥さんじゃないんだよ。

 

顔は、ほとんど同じなんだな。

 

だが生気が無いというか。

 

で、この真冬に素ッ裸だぜ?

 

でな、最初は、

 

旦那は妻の様なモノの

裸に驚いて声を上げた、

 

と思ったんだよ。

 

・・・違うんだよな。

 

肌の質感も色も、

木そのものなんだよ。

 

で、もっと怖かったのは、

 

左右の手足が

逆に付いてるんだよ。

 

分かるか?

 

それが玄関に上がって

来ようとしてな。

 

右足と左足が逆なもんだから、

動きがおかしいんだよ。

 

上がり口に何度も

つっかえたりして。

 

それが何より恐ろしくてなぁ」

 

確かに想像するだけでも

イヤな造形だ。

 

「彼女は絶叫してたな。

 

お隣の旦那も。

 

明らかに妻じゃないって

確信したと思う。

 

でもな、一応人間の形は

してるんだからさ。

 

刺せないぜ?

なかなかそんなモノを。

 

やっぱ、人間の心って

リミッターあるからさ。

 

もし人間だったらどうしよう、

とか思うよ」

 

それは確かに分かるような

気がする。

 

(続く)ドルイド信仰と儀式の生贄 4/4へ

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