ドルイド信仰と儀式の生贄 4/4

クヌギ

 

「でな、

 

その『奥さんの様なモノ』が

とうとう小屋の中に入って来て、

 

何か言うんだよ。

 

それも、何言ってるか

分からなくてな。

 

カブトムシの羽音みたいな音を

喉から出して。

 

で、左右逆の足で

ヨタヨタしながら、

 

俺の方に向かって

来るわけだ。

 

しかし、

俺も真面目なもんだよなぁ。

 

それでも最後に一応、

 

○○さんですかっ?

って聞いたよ。

 

さっきのリミッターの話な。

 

それでも、

 

ソイツは虫の羽音の様な

耳障りな音を喉から発して、

 

これまた左右逆の

両腕を伸ばし、

 

俺の首を絞めてきた

もんだから、

 

思いっきりソイツの腹を

前蹴りで蹴ったよ。

 

すると、

腹がボロボロ崩れて、

 

樹液みたいな液を

撒き散らし、

 

腹に空洞が出来てやんの。

 

それで決心が出来たんだよな。

 

あぁ、これは人間じゃないから

ヤッちゃって良いんだ、

 

ってな」

 

と豪快に笑いながら

叔父は言った。

 

こういう時の

度胸を決めた叔父は、

 

本当に頼もしく見える。

 

不気味な声を発しながら、

ソイツは起き上がって来たらしい。

 

叔父はナイフをソイツの

脳天に一発ぶち込み、

 

もう一度蹴り倒したら、

 

空洞の腹を貫通し、

胴体が千切れたらしい。

 

彼女と旦那の絶叫が、

一段と激しくなったという。

 

「腹の中から異臭のする

泥やらムカデやら、

 

色んな虫がワラワラ

出てきてさ。

 

もう部屋中パニックだったな。

 

床に倒れたソイツの人型も、

段々ボロボロと崩壊していって、

 

床には泥と虫だけが

残ったね。

 

気持ち悪くて、

ほとんど暖炉に放り込んだな。

 

突立てたナイフが、

 

いつの間にか消えてたのが

気になったけどな」

 

その凄惨な格闘が終わり、

 

全ての残骸を暖炉に

投げ込んだ後、

 

すぐさま旦那に奥さんへと

電話をさせたらしい。

 

奥さんはすぐに出た。

 

「奥さんは死んでいた!

とか、

 

やはりそういうのは

心配するだろ、

 

形が形だけに。

 

元気だったけど、

まぁキョトンとしてたな。

 

さすがに今起きた事は

言わなかったけどな。

 

後で旦那が話したか

どうかは知らないが・・・

 

でも、

 

さすがに全て終わった後に

恐怖が襲って来たね。

 

手足とか震えて来てな。

 

彼女はずっと泣いてたな。

 

で、一番怖かったのは、

 

彼女が暫くして変な事を

言い始めたんだよな・・・。

 

何でアレに○○さんですか?

と問いかけたのか、と。

 

変な事を聞くなぁ、

と思ったね。

 

顔はどう見ても、

あの奥さんなんだから」

 

「で、どういう事だったの?」

 

そう俺が聞くと、

 

叔父は気味が悪そうに

こう言った。

 

「よく自分の形をしたモノの頭に

ナイフなんて突き立てられたね、

 

って彼女はこう言ったんだよ。

 

つまり、彼女には、

 

あの化け物が俺の姿に

見えてたんだよな

 

叔父が想像するところは、

次の様な事らしい。

 

古代ドルイドの秘儀で、

 

オークの木に

邪悪な生命が宿った。

 

それに、

 

あの奥さんの怨念も

乗り移り、

 

生贄が止まった事に見兼ねて

自ら実体化して現れた、と。

 

そして、

見る対象者によっては、

 

あの化け物が様々な姿形に

見えるのではないか、と。

 

「翌日、

 

陽が真上に昇るまで待って、

あの木を見に行ったよ。

 

木の表面が2センチ程

陥没してて、

 

1メートル60センチくらいの

人型になってたな。

 

そして、頭部らしき箇所に、

俺のナイフが突き立ってたな

 

やがて、

 

夕方になり旦那の知り合いの

業者がやって来て、

 

クヌギの木を切り始めたという。

 

「最初にチェーンソーが

入る時と、木が倒れる時。

 

完全に聴こえたんだよ。

 

女の絶叫がね。

 

俺と彼女と旦那だけが

聴こえた様子だったな。

 

切り株と根っこまで根こそぎ

トラックに積んでたんだが、

 

小動物の骨が出るわ出るわ。

 

業者も帰りたがってたな。

 

さっきの人型といい、

そりゃ気味悪いよな。

 

まぁ、人骨が出なかっただけ

マシかぁ?」

 

後日、隣の夫婦が、

 

それなりの品物を持って

謝罪に訪れたという。

 

「受け取ってすぐに

捨てたけどなぁ。

 

やっぱり、色々と

勘ぐってしまうよな」

 

そして、

すぐ夫婦は引っ越し、

 

叔父たちもその後すぐに

マンションを引き払ったらしい。

 

しばらくして、

 

叔父は彼女とは一時

別れてしまったそうだ。

 

「そんな事もあったねぇ」

 

紅茶を飲みながら、

叔母が懐かしそうに言った。

 

「そうだな・・・

あぁ、そう言えば・・・」

 

叔父が庭の木を見つめて

呟いた。

 

「うちにもオークやナラの

カシワの木があったな。

 

縁起物だから新築の時に

植えたんだがな。

 

まぁ、アレだな。

 

モノは使い様と言うか、

人間の心次第と言う事かな。

 

それがプラスかマイナスかで

有り様が変わってくるからな」

 

そうして、

叔父の話は終わった。

 

今度来た時は、

 

カシワの葉で包んだ柏餅を

ご馳走してもらう事を約束し、

 

叔父夫婦の家を後にした。

 

(終)

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