邪視という恐ろしい瞳 3/4

 

「兄ちゃん、起きろ」

 

俺が10歳の時に事故で亡くなった、

1歳下の弟の声が聞こえる。

 

「兄ちゃん、起きろ。

学校遅刻するぞ」

 

うるさい、

あと3分寝かせろ。

 

「兄ちゃん、起きないと

死んじゃうぞ!!」

 

ハッ、とした。

 

寝てた?

 

あり得ない・・・

あの恐怖と緊張感の中で。

 

眠らされた?

 

横の叔父を見る。

 

寝ている。

 

急いで起こす。

 

叔父、飛び起きる。

 

腕時計を見る。

 

5時半。

 

辺りはほとんど闇になりかけている。

 

冷汗が流れる。

 

「○○(俺)、聴こえるか?」

 

「え?」

 

「声・・・歌?」

 

神経を集中させて、

耳を澄ます。

 

右前方数mの茂みから、

声が聞こえる。

 

だんだんこっちに近づいて来る。

 

民謡の様な歌い回し。

 

何を言ってるかは分からないが、

不気味で高い声。

 

恐怖感で頭がどうにか

なりそうだった。

 

声を聞いただけで、

世の中の何もかもが嫌になってくる。

 

「いいか!

足元だけを照らせ!!」

 

叔父が叫び、

 

俺はヤツが出て来ようとする、

茂みの下方を懐中電灯で照らした。

 

足が見えた。

 

毛一つ無く、

異様に白い。

 

体全体をくねらせながら、

近づいて来る。

 

その歌のなんと不気味な事。

 

一瞬、思考が途切れた。

 

「あぁぁっ!!」

「ひっ!!」

 

ヤツが腰を落とし、

四つん這いになり、

 

足を照らす懐中電灯の明かりの位置に、

顔をもってきた。

 

直視してしまった!

 

昼間と同じ感情が襲ってきた。

 

死にたい死にたい死にたい!

 

こんな顔を見るくらいなら、

死んだ方がマシ!!

 

叔父もペットボトルをひっくり返し、

号泣している。

 

落ちたライトがヤツの体を照らす。

 

意味の分からない

おぞましい歌を歌いながら、

 

四つん這いで、

 

生まれたての子馬の様な動きで

近づいて来る。

 

右手には錆びた鎌。

 

よっぽど舌でも噛んで死のうか、

と思ったその時、

 

「プルルルルッ」

 

叔父の携帯が鳴った。

 

号泣していた叔父は、

何故か放心状態の様になり、

 

ダウンのポケットから

携帯を取り出し、

 

見る。

 

こんな時に何してんだ・・・

もうすぐ死ぬのに・・・

 

と思い、

 

薄闇の中、

呆然と叔父を見つめていた。

 

まだ携帯は鳴っている。

 

「プルルッ」

 

叔父は携帯を見つめたまま。

 

ヤツが俺の方に来た。

 

恐怖で失禁していた。

 

死ぬ。

 

その時、

 

叔父が凄まじい咆哮をあげて、

地面に落ちた懐中電灯を取り上げ、

 

素早く俺の元に駆け寄り、

俺のペットボトルを手に取った。

 

「こっちを見るなよ!!

 

ヤツの顔を照らすから

目を瞑れ!!」

 

俺は夢中で地面を転がり、

グラサンもずり落ち、

 

頭をかかえて目を瞑った。

 

ここからは、

後で叔父に聞いた話。

 

まずヤツの顔を照らし、

視線の外で位置を見る。

 

少々汚い話だが、

 

俺のペットボトルに口をつけ、

しょんべんを口に含み、

 

ライトでヤツの顔を照らしたまま、

 

しゃがんでヤツの顔にしょんべんを

吹きかける瞬間に目を瞑る。

 

霧の様に吹く。

 

ヤツの馬の嘶きの様な

悲鳴が聞こえた。

 

さらに口に含み、吹く。

 

吹く。

 

ヤツの目に。

 

目に。

 

さっきのとはまた一段と高い、

ヤツの悲鳴が聞こえる。

 

だが、まだそこにいる。

 

焦った叔父は、

ズボンも下着も脱ぎ、

 

自分の股間をライトで

照らしたらしい。

 

恐らく、

ヤツはそれを見たのだろう。

 

言葉は分からないが、

 

凄まじい呪詛の様な

恨みの言葉を吐き、

 

くるっと背中を向けたのだ。

 

俺は、そこから顔を上げていた。

 

叔父のライトがヤツの背中を照らす。

 

何が恐ろしかったかというと、

ヤツは退散する時までも、

 

不気味な歌を歌い、

体をくねらせ、

 

ゆっくりゆっくりと移動していた。

 

それこそ杖をついた、

高齢の老人の歩行速度の如く。

 

俺たちはヤツが見えなくなるまで

じっとライトで背中を照らし、

 

見つめていた。

 

いつ振り返るか分からない

恐怖に耐えながら・・・。

 

永遠とも思える苦痛と恐怖の

時間が過ぎ、

 

やがてヤツの姿は闇に消えた。

 

俺たちはロッジに戻るまで

何も会話を交わさず、

 

黙々と歩いた。

 

中に入ると、

 

叔父は全てのドアの戸締りを確認し、

コーヒーを入れた。

 

飲みながら、やっと口を開く。

 

「あれで、叔父さんの言う、

興味は逸れた、って事?」

 

「うぅん・・・恐らくな。

 

さすがにチンコは惨めなほど

縮み上がってたけどな」

 

苦笑する叔父。

 

やがて、ぽつりぽつりと、

邪視の事について語り始めてくれた。

 

(続く)邪視という恐ろしい瞳 4/4へ

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