夜10時に訪ねてきた見知らぬ子ども
午後10時ぐらいだったと思うが、
風呂に入っていたら呼鈴が鳴った。
「ったく誰だよ。
風呂入ってますよ僕は・・・」
と思いながらも、
玄関に出るために慌てて
パンツやらを履いていると、
やたらピンポンピンポン連打している。
イライラしながら服を着て
玄関を開けると、
子どもが立っていた。
俺「どうしたの僕?どこの子?」
子「ねぇ、入っていーい?」
俺「なに言ってんだよ。
だいたい今10時過ぎてんだよ?
どこの子よ?」
気持ち悪い子だと思ったが、
風呂を邪魔された怒りの方が強く、
どこの子か突止めようと思った。
子「えー。
だってお母さん来てるんでしょ?」
俺「お兄ちゃん一人で住んでるし、
誰も居ないから。
違う家と間違ってないか?
つーか、
お母さんは誰の家に行くって
言ってたんだ?
お兄さんが連れていってやるよ」
このガキの親に、
一言かましてやりたかったからね。
子「お兄さん、
○○さんじゃないの?」
俺「そうだよ・・・?
お母さんが俺ん家に行くって
言ったのか?
ぼく、名字は?」
子「○○だよ」
俺「○○さんなんて知らねーよ?
からかってんの?マジ怒るよ?」
黙る子ども。
怒るよと言ったが、
文面のとおり最初からムカついていた。
夜に知らないガキが来る気持ち悪さ。
しかも俺の名字は知ってるわで
恐怖感なんだが・・・。
それより怒りの方が
グングン沸き上がっていた。
俺は靴を履き、
玄関から出て子どもに、
俺「まず君ん家に帰ろうや。
俺送るから。
親に言いたい事もあるし。
で、どっち?」
素直にあっちと指差す子ども。
俺は道を聞く以外の声は発せず、
黙々と歩いた。
かなり歩き、
子どもの指示した家に着いた。
言葉が出なかった・・・。
その家は廃屋で、
昔に友達と肝試しに来た家だった。
もちろん、
人が住めるような状態じゃない。
はっ!と横を向くと、
そう・・・子どもは居ない。
恐怖で全速力で走り逃げ、
携帯を持って来ていた俺は走りながら、
肝試しした友達の一人に電話をし、
すぐ皆を俺の家に来るようにと伝えた。
1時間もしないうちに、
3人全員が集まってくれた。
俺が事情を話すと、
そのうちの一人も昨日子どもが来たが、
ドアを閉め追い返したという。
皆、驚愕したが、
これは何かあると、
話し合いの結果、
次の日の明るいうちに、
その家に皆で行こうという事になった。
中には嫌だと言う奴もいたが、
4人のうち2人の所に来たんだから
いずれ来ると説得した。
人数少ないと怖いからね・・・。
そして当日の昼過ぎ、
誰一人欠ける事なく集まり、
裏の壊れた勝手口から入った。
昨日の出来事もあったため、
昼間でもガタガタ足が震えるくらい怖い。
奥へと進み、
皆同時に「 あ!」と声が出た。
居間の壁にマジックで、
俺ともう一人の名前。
もちろん俺達が書いたもの。
子どもが来た原因はこれだろう
と思った俺達は、
壁の文字を消すシンナーと、
供養のための花を買いに
一度街に出て、
またそこに戻り、
文字を消して、
花を居間の真ん中に置いた。
そして声を出して謝罪し、
その家を後にした。
不思議なのは、
その家はそんなに古くなく、
人が死んだという話もない。
子どもの服装からしても、
最近の子どもが着ているような
感じの服だった。
その日、
まだ恐怖感と疑問で、
4人で夜中まで過ごし、
そのことを話していた。
結局、
あそこまでやったんだから、
もう何もないだろうということになり、
皆解散という時、
『もう来ちゃだめよ・・・』
と女の人の声。
4人が同時に聞いた。
たぶん耳元で。
恐らく母親だろうね。
でもその日から、
とりあえず何もありません。
友達の一人がその後に失踪した以外は・・・
(終)
不法侵入に落書き
さらに子どもにキレてその親に文句言いに行こうとする沸点の低さとモノの考え方
どう考えても語り手の存在が一番のホラー