小さい頃から一緒にいる猫の親子 1/2

猫

 

俺が生涯体験した最も怖い出来事は、

猫たちの話。

 

本年21歳になる俺は

元々田舎の生まれで、

 

少し足を伸ばせば海が見える、

山と川に挟まれた愛知県の某町で、

 

両親と3匹のシャム猫と暮らしていた。

 

母猫のジジと、

ザザとゾゾの姉弟。

 

ゾゾは体格がよくて、

近所のボス猫だったらしい。

 

生まれた時から一緒だったので、

ザザとゾゾは俺をよく構ってくれた。

 

加減もしらない馬鹿ガキだったけど、

 

猫の機嫌の伺い方は、

本能で覚えたんだと思う。

 

ところでその頃、

 

俺が住んでいた一軒家の近所に、

父方の実家があった。

 

祖父、祖母、叔父夫婦、

従兄弟の三兄妹が住んでいたが、

 

俺はその親戚一家に懐かずにいた。

 

酪農農家を営んでいるからか、

 

家の中はうっすら獣のような

臭いがしていたし、

 

向こうの一家も、

 

俺のことを特に歓迎していない

雰囲気があったからだ。

 

とりわけ祖父の理不尽な頑固は

子供心にも異様に思えたし、

 

父親の兄にあたる叔父は

得体の知れないところがあって、

 

どうしても好きになれなかった。

 

そして普段は礼節に厳しい母親も、

 

俺のそんな態度については

何も言わなかった。

 

そんなある日、

たぶん小学1~2年の頃、

 

早い時間に目を覚ました事がある。

 

万年朝寝坊だった俺は、

物凄く冷え込んだ日だったこともあって、

 

そのまままたすぐ布団に潜り込んだ。

 

一階あたりで何だか声が

聞こえたような気がするが、

 

気にしなかった。

 

ただいきなりザザが飛び込んで来て、

 

布団の中に入って来てくれたのは

覚えている。

 

その後、

目覚まし時計に起こされたが、

 

ザザはランドセルを背負うまで、

ずっと部屋にいてくれた。

 

そしてそんなことが日を置いて

3~4回続いた。

 

朝だか夜だか、

とりあえず決まって俺は寝ていて、

 

どこか遠くから声が聞こえて起きる。

 

すると猫が傍に来てくれたり、

または布団の上で寝ていたりして、

 

また眠る。

 

特に不思議な事とは思わなかった。

 

ただ、

繰り返し遭遇していくうちに、

 

遠くの声は何だか理不尽に怒鳴るような、

一方的な罵声のように思えた。

 

両親や友達に相談する気も起きなかった。

 

学校は遊ぶところだったし、

 

家には猫がいるから、

話は猫に聞いてもらって、

 

猫から返事を聞いたような気をしていれば

十分だったからだ。

 

今思えば俺も十分に変な子

だったかも知れないが、

 

猫たちは殆ど姉兄のような間柄だった。

 

しかし小学3年の夏、

母猫のジジが入院することになる。

 

ジジは老衰のため消化器官を悪くし、

 

排泄にすら痛みを伴うように

なっていたらしい。

 

小学生の俺はジジの身体が

悪くなったことしか分からず、

 

ただ不安になった。

 

その日は手術のため、

 

母はジジを伴って

遠くの動物病院まで行き、

 

俺は父と親戚の家に泊まった。

 

従兄弟たちの住む離れは心細く、

実家の父の部屋にも泊まれなかった俺は、

 

平屋建てに似合わない、

ちぐはぐな洋間で寝ることにした。

 

心細さとジジに対する不安で

なかなか寝つけなかったが、

 

ようやくウトウトとし始めた頃。

 

ミシィ・・と、

板敷きが軋む音が聞こえた。

 

眠っている俺を気遣うような、

慎重な足取りだった。

 

トイレは逆方向だし、

 

父親が様子見に来たのだろうかと思い

毛布から少し顔を上げると、

 

そこにはボーっとした様子の叔父がいた。

 

話しかけるでもなく、

明かりも点けず、

 

ただ黒ずんだ顔でこちらを

じっと見ている。

 

少し猫背にして、

 

怒っても笑ってもいない

魂の抜けたような顔で、

 

俺のことを見ていた。

 

その只ならぬ様子に

声も上げられず縮こまった俺は、

 

すぐさま布団を被り、

目を瞑った。

 

意味が分からなかったし、

凄く怖かった。

 

どれくらい経ったか分からないが、

 

叔父は一時間以上、

そうしていたと思う。

 

やがて気配が去って行っても、

 

俺は布団から出られないまま

朝を待った。

 

叔母が起き出して

俺を起こしに来てくれたが、

 

父親が来るまでは絶対に起きない!

と言い張り、

 

呼ばれてやってきた父親から

家の鍵をその場で貰うと、

 

先に家に帰ると言って飛び出した。

 

玄関に向かって廊下を走っていく途中、

 

食堂の中で叔父が食事をしているのが

目に入った。

 

なんだか細長いパンを食べていたが、

 

真ん中に入った切れ目からは

(うじ)のような白いモノが一杯詰まり、

 

うごめいているように見えて、

俺は一目散に家へ帰った。

 

ジジは無事手術を終えたが、

 

それでも長くは生きられない

ということが分かっていた。

 

急激にみすぼらしくなってしまった

ジジだったが、

 

頭と声だけはしっかりしているらしく、

 

ことさら丁寧に接するよう

厳しく言われた俺にも、

 

愛想だけは返してくれた。

 

あの夜の出来事は迷った後、

両親に話した。

 

二人とも嫌な夢を見たね、

と言ってくれたが、

 

母の方は胸を撃たれたような

顔をしていたのを覚えている。

 

(続く)小さい頃から一緒にいる猫の親子 2/2

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